J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲の構造(1)

はじめに

CDの解説などでは、バッハの協奏曲の構造について、「リトルネロ形式である」の一行で説明が済まされる場合が多いと思います。しかしながら、より深く曲と演奏を味わうためには、もう少し突っ込んで分析してみたいところです。このメモを参考に、バッハの協奏曲の構造美をより深く味わっていただければ幸いです。

 

 *()内の数字は小節番号を表しています。

 *【】内の数字は動画のタイムを表しています。 

 

第1番 第1楽章

 

第1番第1楽章の構造は、

 

A-B(abc)-B'(a'b'c')-A

 

というシンプルなものです。

 

第1部A ヘ長調 (1~12)【0:01】ヘ長調 テーマの呈示。様々な動機が、ビッグバンのごとくいっせいに登場。

 

第2部B(13~42) ヘ長調から出発

a (13~23)【0:35】 リトルネロ。各楽器をフィーチャー(お披露目会か?)。

b (24~32)【1:07】 第1ソロ→リトルネロ

c (33~42)【1:33】 第2ソロ。後半はホルン下降音型より始まるクライマックス。

 

第3部B’(43~71) ハ長調から出発。基本構造は第2部と同じ。

a (43~47)【2:01】 第2部aより切り詰められている(各楽器のお披露目会をカット)。

b (48~62)【2:16】 第2部bより拡大されている。

 

*ソロ部後半(53~56)【2:30~2:41】は、ハモリの楽器組み合わせが異種になる唯一の箇所(ホルン&オーボエでハモリ→オーボエ&ヴァイオリン・ピッコロ→ヴァイオリン・ピッコロ&ホルン→一瞬ホルン&ホルン→ホルン&オーボエ→ホルン&ヴァイオリン・ピッコロ)。隠れたクライマックス。

 

*(57)【2:41】から一時的にヘ長調(主調)になる。古典派以降の曲に慣れた僕は、ここにいつも混乱させられてきた。ブルックナーの第3交響曲における展開部で、主調のニ短調になる部分があるが、そこにおぼえる違和感と同じ、というとわかっていただけるだろうか?しかしそこが楽章全体の構造上節目になるわけではいのだ。

 

c (63~71)【2:59】 第2部Cと構造はほぼ同じ

 

第4部A(72~)【3:24】ヘ長調 第1部の再現

 

 

[中川孝博 2015年4月19日記/2017年1月10日修正]