はじめに
先に「2023年K-POP私的お薦めアルバムBest 10」をアップしましたが、同じように2024年ヴァージョンも作ってみましょう。ただし、今年は豊作の年で、とても10枚には収まらないため、Best 15とさせていただきます。最終的には2025年1月に完成する予定ですが、それまでは、候補が登場するたびに加除修正していきます。
2023年版と同様に、下記の方針で作っていきます。
(1) 女性グループのアルバムに限ります。今の私には男性グループの曲は力強すぎて、1曲だけだとよいのですがアルバムを通して聴くと著しく疲れてしまうので。
(2) アルバムの画像をクリックすると amazon music にアップされている当該アルバムに飛びます。
(3) MVは原則としてタイトル曲1つだけを挙げます(例外もあります)。
(4) 2024年中に複数のアルバムを出しているグループについては1つに絞り込みます。
(5) 普段はクラシックとヘヴィ・メタルしか聴いていないミドル・エイジが選んでおりますので、偏っています。
最近のシングル
Dreamcatcher: JUSTICE
Weeekly: LIGHTS ON
VVUP: Ain't Nobody
Kep1er: Shooting Star
SPIA: Deeeep
- Dreamcatcher: JUSTICE:なんてすばらしいんだ・・・
- Weeekly: LIGHTS ON:ブリッジやサビにおける精妙なメロディ・ラインとコード進行が好きだ。これをちゃんと歌いこなせているということから察するに、このグループは音楽的にかなり優れた集団なのではなかろうか。アルバム全体も一聴した限り、とても音楽的に素晴らしい。これは確実に私的ランキングに入りますね。いずれじっくり分析しましょう。
- VVUP: Ain't Nobody:メンバーのリズム感が良く、聴き手も速いテンポに安心して乗ることができる。発声・発音も良く、英語・韓国語ともに非常に聞き取りやすく、耳に心地よい。バンド・ライブの演奏も全く不安定さがなく素晴らしいのでリンクを貼らせていただいた。
- Kep1er: Shooting Star:名曲だと思う。アカペラになるブリッジで緊張感を醸成し、サビで解放され抒情が広がる構成は秀逸。
- SPIA: Deeeep:前作 'Daddy's Little Girl' のハード路線とはがらりと変わってメロウな曲。いろいろな曲に挑戦してみてください。MVよりもDance Practice動画のほうが、メンバーの表情等が自然で素敵なように感じられるので、リンクはこちらのほうを。
暫定1位 (G)I-DLE: 2
- 個性が際立つ声の饗宴。バラエティに富んだ良質の曲が楽しめる傑作。今作ではウギ氏の低域コントロール力が増したように感じられ、そのため全員の声がかつてないほどバランスよく並ぶ。過去の作品群と同じくアナログライクな太い音が心地よい。
MV: Wife
暫定2位 Red Velvet: Cosmic
- 10周年を迎えたRed Velvetのミニ・アルバム。素晴らしいの一言。詳しくは後日。
MV: Cosmic
暫定3位 ARTMS: Dall
- LOONAのメンバー12人のうち5人が新たに結成したグループ(ARTMSと書いてアルテミスと読む)のデビュー・アルバム。全くの新人はおらず、10代のメンバーもおらず、全員が安定した技術・経験・喉を持っているため、安心して曲に浸ることができる。
- 5人の声の性質は似通っており、クラシックの用語でいえば、全員がソプラノ・レジェロまたはソプラノ・リリコ・レジェロ、つまり、軽い声に分類されると思う。ドラマティックな声は出せない代わりに、素早い装飾的なパッセージ等を得意とする声である。本アルバムの制作陣は5人の声の特徴を存分に活かした曲を作っていて素晴らしい。例えば、ロックでよく用いられる8ビートを用いた曲はほとんどなく、16ビートの曲がほとんどだが、これによりおのずとメロディは16分音符主体となり、音数の多い装飾的なパッセージを自然な形で盛り込むことができているように思う。
- このアルバムにパワフルな曲はないし、ラップ・パートもごくわずかだ。でも、技巧をこらした軽くやわらかい極上の声に酔いたいときには、このアルバムは随一だ。7月には日本で公演が行われる。楽しみだ。
MV: Flower Rhythm
暫定4位 PURPLE KISS: BXX
*日本オリジナル盤 ON THE VIOLETも素晴らしい!
- この世代の中では最も歌唱力が高い(特にスアン氏は天才だと思う)と思われるグループの良作。オート・チューンによる音程補正等がほとんどなされていないと感じられるナチュラルな声。聴いていて安らぎをおぼえる。一聴しただけだと比較的地味な曲が並んでいるように感じられるかもしれないが、繰り返し聞くほどにじわりとその良さが心にしみ込んでいく。
- このグループの曲は、ヴォーカルを邪魔するアレンジやミキシングがなされることが多いのが不満だったのだが、本盤の 'Heart Attack' は低音バランスが非常にナチュラルで圧が強くなく、かつ、スネアを低い音域にしておりヴォーカルを全く邪魔しておらず、出色の出来。ぜひ、今後はこの方向でのアレンジおよびミキシングをデフォルトとしていただくよう切に望む。
- 2024年7月17日発売の日本オリジナル盤ミニ・アルバム "ON THE VIOLET" がなぜか16日に届いた。"BBB", "Pretty Psycho", "7HEAVEN", "So Far So Good" の4曲入り。日本語歌詞はユキ氏がすべて担当しているが、これが音楽的に極めてこなれた歌詞になっており、とりわけ"BBB" 以外の3曲は最初からこの形だったと言われても信じてしまうほど。歌唱も "BXX" と同じく高水準であり、特に "Pretty Psycho"や "So Far So Good" は、オリジナル(それなりに前の発売)より数段レベルの上がった歌唱を楽しめる。ファンは必聴ですね。7月20日の川崎ライブに行って生の歌唱を体験したかったが、諸事情により断念。無念。たいへん残念。
暫定5位 STAYC: Metamorphic
- 多様な14曲が収録されているが、ベースはアメリカのPOPSといってよく、シンプルなコード進行の上にキャッチ―なメロディーがのる曲が多い。聴きやすいアルバムだが、歌唱もバックも非常に洗練されており、高レベルの作品だと思う。一部の曲においてオート・チューンのかけ具合がもっと控えめだったらさらによかった。
MV: Cheeky Icy Thang, 1 Thing, Find/Roses/Fakin', Stay WITH me1 Thing1 Thing
暫定6位 H1-KEY: LOVE or HATE
- 間違っていたらごめんなさいだが、City Popの要素をふんだんに注入した哀愁のただよう佳作。詳しくは後日。
MV: Let It Burn
暫定7位 NMIXX: Fe3O4: BREAK
- 歌がとにかくうまい。特にLILY氏は天才だと思う。全員のアンサンブルも秀逸で、アドリブやコーラスを豊富に入れており、声の饗宴を存分に楽しめる。収録曲が多彩かつ独創的で、野心的なアルバムだ。私は未成年の声特有の不安定さと生硬さが少し苦手なので順位が少し低くなってしまうが、数年後が楽しみだ。
MV: Soñar
暫定8位 ITZY: BORN TO BE
- EDMやヒップホップ、特にメロディに抒情があまり盛り込まれていないものが本来苦手なので、これらのジャンルの曲をもっぱら出してくるITZYはちょっと苦手だった。が、このアルバムは、以前よりもロック色が強くなり、私にとってとても聴きやすいものとなった。明確にロックそのもののアレンジになっている曲は2曲ほどしかないが、おそらく全ての曲につき、ロック調のアレンジを施してもぴったりハマると思われる。
- 2024年5月17日の来日コンサートに参加してきた。本アルバムからはLIA氏のソロ曲と 'Dynamite' を除く全曲を演奏してくれた。コンサートでは、一部の曲を除き生バンドがバックをつとめ、多くの曲がロック調にアレンジされて演奏された。期待にたがわず、ああ、素晴らしいアレンジと演奏だった。ぜひライブ盤を出してほしい。初期の代表作群も、オリジナルよりも現在のライブ演奏のほうが格段に円熟した歌唱を聴かせてくれていたし、ぜひお願いします。
- 5人(1人はソロの1曲だけ参加)の声はそれぞれ個性が際立っており、同じように個性が際立っている(G)I-DLEとの類似性を感じさせる。が、彼女らのポテンシャルをスタッフが存分に引き出せているかといわれると、(G)I-DLEの域には至っていないと思う(これが本ブログにおいてランキングが下がる要因)。その原因はスタッフにあるような気がしている。レコーディングの様子を見せる動画を視聴する限り、専門的なディレクションが十分に与えられていないようにみえる。あるヴァラエティ番組において(G)I-DLEのソヨン氏がITZYのアルバムをプロデュースしてみたいと語っていたが、ITZYのスタッフチームはぜひこの申出を受けたらどうだろうか。(G)I-DLEのレコーディングの様子を見せる動画を見る限り、ソヨン氏のディレクション力は極めて高いので、彼女がプロデュースすればITZYのアルバムの歌唱はより高レベルのものになると思われる。
MV: BORN TO BE
暫定9位 IVE: SWITCH
- 小中学生向きの曲を歌うグループと思っていたが、このアルバムにより、今後は私にもいけるかもしれないと思い始めた。メンバーの多くが大人の声に移行し始めているように感じている。
- 韓国語を学び始めてまだ2カ月弱なのだが、そんな私でも、このアルバムは曲を聴きながら歌詞カードをなんとか目で追っていける(本ブログで紹介している他のグループのアルバムではまだまだ難しい)。メンバーの発音がとても良いからだろう。そしてさらに、1文字1音節というハングルの特徴をうまく活かしたメロディーやリズムの曲ばかりだからに違いないと勝手に確信している(韓国語が上達したら詳しく分析してみたい)。というわけで、韓国語修行中の私にとって、このアルバムはとにかく心地よい。
MV: Accendio
暫定10位 ICHILLIN': Feelin' Hot
- それほど有名なグループではないと思うが、一定の実力を持ち、今後さらに成長してくれる期待が持てる好印象のアルバム。多様な曲、しかもしっかりとしたアレンジの曲が揃っており、飽きさせない。
- 最後の曲を除き、オート・チューンの香りをほとんど感じさせず、多少荒けずりだがナチュラルな歌唱を味わえる。今後も期待したい。
MV: BITE ME
暫定11位 Candy Shop: Girl's Don't Cry
*現時点でamazon musicにアップされていないようです。アップされたらアルバム写真にリンクを貼ります。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/none/path/sb32b1a32aff7d27e/image/i8bd574b93740d76b/version/1719065016/image.png)
- デビュー・アルバムよりも声が成熟してきたし、曲も良いので、ランクイン。ナチュラルで落ち着いた伴奏によるさわやかな佳曲が並ぶ。この伴奏が本当に良くて、地味だが凝っており、注目したい。
- 1曲目 'Don't Cry'は、ドラムが四つ打ちで一貫しているのだが、Bメロ前半ではドラムを止めてみたり、サビではベースのみに付点を付けてみたりと、飽きさせない工夫が随所で施されており、聞いていて楽しい。
- 2曲目 'Tumbler (Hot & Cold)' は、イントロで示された循環コードが全編にわたり反復される中でヴォーカルが節ごとにフレーズを微妙に変えていくのが面白い。うっかりすると曲がどこまで進みどこに向かっていくのかわからなくなるので、参考に曲の構造を簡単に書いておこう。イントロ(循環コードを提示。4小節)→サビ(8)→Aメロ(8)→Bメロ1(ラップ。4)+Bメロ2(前半アカペラ。4)→サビ(8)→間奏(8)→Aメロ(8)→Bメロ1(4)+Bメロ2(4)→サビ(8)→Bメロ1と間奏の要素を用いたコーダ(8+8)。
- 3曲目 'Welcome To My World' は、2番(2回目のAメロとBメロにあたる部分)のコード進行が1番と異なっていたり、AメロとBメロのテンポは同じなのにBメロのヴォーカルの音数を増やしてスピードアップしたような感覚を与えたり、レゲエ風のゆったりしたリズムを後半でせわしないものに変えたり(テンポ等を変えることなく音数を増やすだけで激しい変化に感じさせている)と、大仰でない微妙な変化を絶えず生じさせていく構成・アレンジが素晴らしい。
- 4曲目 'Good Girl' は、デビュー・アルバムのタイトル曲のリミックス。メンバーの交代があったので、新たな出発を宣言しているのだろうか。アレンジは今回のアルバムのテイストに合わせたナチュラルなもので、とても気に入っている。
MV: Don't Cry
暫定12位 WOOAH: UNFRAMED
- アルバムのタイトル通り、様々なタイプの曲に挑戦した意欲作。詳しくは後日。
MV: POM POM POM
暫定13位 TWICE: With YOU-th
- TWICEはずっと苦手だったのだが、本作収録の 'ONE SPARK' を聴いて涙があふれ、この曲を契機に苦手意識を克服することができそうな予感を覚えている。
- 本盤の魅力は、軽快さと抒情を見事に両立させた曲と、曲が求めているものをみごとに具現化しているメンバー全員の確かな歌唱技術にある。この魅力はTWICEならではだと思う。後継者は出ないかもしれない(思いつくのはIVEくらい)。
- ただし、音楽的には不満な点も多い。曲のヴァラエティが豊かとはいえないこと、リズムが単調なこと、ドラムにタムタムをほとんど用いていないこと、'RUSH' を除きベースの存在感が希薄なこと、verse-bridgeが繰り返される際にアレンジをほとんど変えていないこと、コーダに工夫がなくあっさり終わる曲が多いこと、等々。完成品でなく本格的にアレンジを始める前のデモを聴いている気分になる。歌詞につき英語の割合が多く韓国語の発音やアクセントを十分に味わえないことも不満。というわけで、上述した唯一無二の魅力にもかかわらずランキングは下位となってしまう。
MV: ONE SPARK