J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲の構造(2)

はじめに

 

CDの解説などでは、バッハの協奏曲の構造について、「リトルネロ形式である」の一行で説明が済まされる場合が多いと思います。しかしながら、より深く曲と演奏を味わうためには、もう少し突っ込んで分析してみたいところです。このメモを参考に、バッハの協奏曲の構造美をより深く味わっていただければ幸いです。

 

 *()内の数字は小節番号を表しています。

 *【】内の数字は動画のタイムを表しています。 

 

 

第1番第2楽章

 

 

第1番第2楽章の構造は、

 

A(aa’)-B(bb’b’’)-C

 

と分析できます。

 

第1部A (1~8)【0:01】ニ短調

a(1~4)【0:01】主題の提示

ニ短調だが、ドミナント(ラドミの和音)から始まり、不安定。いつでも転調されそうな感じ。この不安定さは以下もずっと同様(節目でトニック終始するのだが、その和音が次のパートのドミナントにもなっているという構造がずっと続く)。おかげで僕たちは、心理的に緊張感を保ち続けなければならない。果てしなく続くような印象をおぼえ、むずむずしながら最後までつきあうことになる。

a’(5~8)【0:25】ト短調に転調して主題の再提示

 

第2部B(9~30)【0:51】ハ短調から出発

b (9~19)【0:51】

下声部で主題前半を模倣(9~11)【0:51】→上声2楽器でカノン(オーボエが先。ヴィオリーノ・ピッコロが続く)(12~19)【1:10】。

b’ (20~30)【2:02】

ニ短調に転調し、ほぼ同じ順序で進む。つまり、下声部で主題前半を模倣(20~22)【2:02】→上声2楽器でカノン(今度はヴィオリーノ・ピッコロが先。オーボエが続く)(23~30)【2:19】。

b’’(31~35)【3:10】

ト短調に転調し、「下声部で主題前半を模倣」が始まるが、カノンは始まらず、「もうええやろ、お終いにしようや」とばかりにオーボエがカデンツァを弾いて流れを断ち切る(34)【3:27】。

 

*オーボエのカデンツァからC(コーダ)が開始したと解してもよいかもしれません。

 

第3部C(36~39)【3:41】コーダ

静謐な和音のやり取り。ニ短調トニックで終止するかと思いきや、結局ドミナントで終止。最後まで安定しませんでしたね。

 

[中川孝博 2017年2月11日修正]