2025年Heavy Metal私的お薦めアルバムBest 10(確定!)

はじめに

 

2025年に発売されたHeavy Metalのアルバムの中でオススメのものを紹介するブログです。1980-1990年代にキャリアをスタートさせたバンドにしかあまり興味がない人間なので、今年も、10枚も挙げることができるかどうか心配でしたが、何とか完成させることができました。当サイトの音楽部門では、本ブログのアクセス数が一番多いのです。なかなか更新しない私に愛想をつかすことなく熱心に読んでくださるみなさんに感謝いたします。

 

今年は、1月初っ端からジョン・サイクスの訃報に接し、その後にオジー・オズボーンも亡くなり、SODOMやデヴィッド・カヴァーディールが引退するという報道にも接するなど、悲しい出来事が続いて落ち込みました。また、私の情報収集力が低いだけのことなのかもしれませんが、これは凄い!と思わせてくれる新譜にあまり出会えなかったので寂しかったです。K-POPのブログのほうでは読者のみなさんにおもしろい新譜をコメント欄で紹介していただくという試みを初めており、おかげで面白い曲に出会えました。2026年のメタルブログでもコメント欄を開設するかもしれません。そうなりましたら情報通のみなさま、どうか私をお助けください。

 

【26/01/12追記】DOOMの旧譜の一部が9月にLPでリリースされていたこと、そして9年ぶりの新譜が12月10日にリリースされていたことを今知りました……すみません。1か月くらいの間にランキングを修正する可能性がありますのでご承知おきください。

  


追加候補 DOOM: APOCALYPSE

  • 9年ぶりのニューアルバム。12月10日に発売されたという情報を逃していました。何ということでしょう。
  • サブスクで聴いた限り、新たに加入したアベユキヤ氏の演奏は、フレットレス・ベースを使用し、時折ワウで雄たけびをあげるところなど、あの諸田コウ氏の演奏を彷彿とさせるもので(ただし、間違っていたらごめんなさいだが、ピック弾きも結構しているかも。またタッピングはさほど多用していないかも)、Doomの音楽にぴったりで安心した。前作もフレットレス・ベースだったのだが、そのベースがはっきり聞こえないという不満がファンにはあったと聞く。今回は、少なくとも私の再生装置ではバランス良く聴こえる。また、ドラムはよりリアルに生々しい音になっており、ギターはアナログっぽい厚みのある音になっている。サウンド面に関して問題は何もないと思われる。良い音だ。
  • 音楽的には、最初の 'Know Your Enemy' を聴いて初期に回帰したのかと思ったが、聴き進むにつれて、そうではなく(たぶん、同曲はシグネチャーまたは挨拶みたいなものだろう)、長い年月をかけてこれまで培ったきたさまざな要素をブレンドしつつさらなる歩みを進めた、成熟した大人の音楽であることがわかった。どの曲、どのフレーズにも深み・コクがあり、熟成したスコッチのごとき味わいがある。
  • サブスクを聴くだけではよくわからないところもあるので、ランキングに加えるのは、CDが届いてあらためてじっくり聴いてからにしようと思いますが、おそらくぶっちぎりの第1位となるでしょう。

 MV: Know Your Enemy


第1位 BAND-MAID: SCOOOOOP

  • 作詞・作曲・アレンジ・演奏、すべてに気合が入っていることが感じられる力作。LPがリリースされたので紹介した 'Unseen World' (本ブログ第7位)と比べると、BAND-MAID独特のコーラスや(声の)アドリブがあまりみられなくなったのが寂しいが、演奏の熱量と曲の多様性が、その寂しさを補って余りある。
  • アニメのOSTが3曲入っているが、私が視聴していたのは「ロックは淑女の嗜みでして」のみ。オープニング曲を提供するだけでなく、主人公たち(インスト・バンド)の演奏もBAND-MAIDだし、演奏シーンの映像もBAND-MAIDのモーション・キャプチャによるものだし、ということでまさにBAND-MAIDファン垂涎のアニメであった。私も興奮して、放映当時このブログのトップで紹介していた。本アルバムは、最後にインストが収録されており、SAIKI氏もキーボードで参加していて、アニメの設定を地で行っているのが面白い。SAIKIだけに再帰的ということか(意味不明)。
  • インストだけでなく、他の曲の演奏も、もしかしたら間違っているかもしれないが、いつもよりもみなさん荒ぶっておられるというか、弾いて弾いて弾きまくっている気がする。私が愛してやまないKANAMI氏のドラムも、もちろん曲をより引き立たせるためのコンポーズが基本にあるのは確かだが、いつもよりは、他のメンバーのフレーズに寄り添うだけでなく、より即興的に遊んでいる部分が多いように感じた。SAIKI氏のヴォーカルも太くなった気がする。要するに、みなさんの演奏がよりスポンテニアスになっているということ。素晴らしい。
  • 一つよくわからないのが、曲間の無音部分が長いこと。何か意味があるのだろうか。全体をコンセプトアルバムのように聴くのではなく、1曲1曲独立したものとして聴くべしということだろうか。

 MV: Present Perfect


第2位 SODOM: The Arsonist

  • SODOMは、1989年発売の 'Agent Orange' が大好きで、これさえあれば幸せという気分になってしまったため、それ以降は真面目に聴いてこなかった。しかしながら、ニュー・アルバムから先行公開されている曲を耳にして、今回久しぶりにアルバムを購入してみた。唯一不動のメンバー、トム・エンジェルリッパー氏のヴォーカルは、36年前(!)に比して衰えるどころか、非常に洗練され、喉に過度の負担をかけることなく多様な歌い方ができる優秀な歌い手に成長している。また、'Agent Orange' 当時のギタリストであったフランク・ブラックファイア氏が再加入しているし、当時のドラマーであったクリス・ウィッチハンター氏(2008年に亡くなっている)の追悼と思われる曲 'Witchhunter' も収録されている(肝不全で亡くなったことと関連するのかもしれないが、MVでは飲酒のシーンが多く出てきて、痛ましい気持ちになる)。何だか、縁を感じる。
  • 曲の傾向は、さすがにかなり変わった。1989年当時は、4分音符と16分音符をメインとして規則正しく打ち込まれるクランチの効いたリフが中心で、やや単調であったが、今作は、シンコペーション等のリズム上のひねりもそれなりに入っていて、多彩なリフが繰り出されている。曲の展開も、異なるパートに移行するときはリズムやリフの性格をかなり変えたものに移行するので単調にならない。また、その移行の方法に一癖あるものもある。
  • 例として第8曲 'Taphephobia' をみてみよう。2ビート&規則正しい拍のリフで始まるが、0:10から始まるヴァースでは、ギターがシンコペーテッドなフレーズに変化する。ドラムは一応2ビートを維持しているが、バスドラムはイントロに比べてかなり音を抜いており、ギターのシンコペーションとぶつからないようになっている。0:34からブリッジとなるが、当初はギターもドラムも完全にシンコペ―テッドな8ビートをユニゾンで奏で、パンキッシュな展開になるのかと思わせるが、突如0:40で、リフは同じ音を用いながらも半分のテンポに落とし、シンコペなしの規則正しい拍に変化させる。ここでギターとドラムのリズムは衝突することになる。今後どうなっていくのか予測できず緊張が高まった1:04でサビとなり、ギターは白玉、ドラムはダンスミュージックでいう四つ打ちを倍にした八つ打ちとでもいうべきシンプルなものとなり、かつテンポを倍速にして、ブリッジにおける緊張から一気に解放させる。聴き手は自然とヘッドバンギングへと誘われる。ベテランならではの、聴き手を翻弄させる精巧な演出だ。
  • 雑誌Burrn! に掲載されていたエンジェルリッパー氏インタビューによると、どうやらこのアルバムをもってSODOMは引退となるらしい。長年聴いてこなかった私には言う資格が全くないが、それでもやはり、「とても惜しい」と叫びたい。

 MV: Taphephobia


第3位 NEMOPHILA: Apple of my eye

  • NEMOPHILAのアルバムが出るたびに、そのレベルの高さに驚嘆しつつも、1回か2回聴いて終わりというパターンが続いていた。し・か・し、今回は違いそうだ。サブスクで聴いてすぐにCDを購入し、何度も聴いている。 
  • まず、曲の密度がぐんと高まった気がする。サキ氏が脱退し、ギターがハヅキ氏一人になったわけだが、前作よりさらにギター・ソロの出現頻度が低くなっている。その代わり、ギターのリフ、バッキング、そしてむらたたむ氏のドラムのフックが、非常にヴァリエーション豊かになり、あちこちにフックがあって、聴いていて面白く、わくわくする。
  • 次に、曲の密度が高まったことに合わせたのか、各楽器の動きが非常に聞き取りやすい音量バランスになっている。ギターの音量がぐっと抑えられたことに不満をおぼえる方もいるかもしれないが、大昔にライブハウスでいろんなバンドを聴いた経験に鑑みると、ギターが一人のバンドの音量バランスは、ライブでは今回のアルバムのようになることが多い。つまり、今回の音量バランスは非常に臨場感がある。
  • さらに、前作もその傾向著しかったが、「ゆるふわ」の要素がむき出しに前面に出されることがほとんどなくなり、この要素が苦手な私には、聴いていて脱力する箇所がほとんどなくなり、とてもありがたい。
  • 最後に、NEMOPHILAには和の要素を強調する曲が必ず入っており、それに違和感をおぼえることが多かったのだが、今回は、和の要素と西洋音楽の要素がうまく止揚されているように感じた。
  • というわけで、非常におすすめです。

MV: Just Do It! 


第4位 CORONER: Dissonance Theory

  • 若いころ、友人の友人により、スラッシュ・メタルはいわゆる四強だけではないことを教えられた。その教材の1つがCoronerの1stアルバムだった。当時の私は衝撃を受け、国内盤が出ていないスラッシュ・メタルのLP・CDの渉猟を始めることになる。一度解散しているが再結成され、32年の時を経て新しいアルバムが出されることとなった。ああ、なんと素晴らしいことか!
  • まず、ジャケットに魅了された。DNA螺旋が崩れていくイメージのモノクロ画像、そしてCoronerらしい、バンド名とタイトルが刻印された黒の帯。このジャケットを存分に鑑賞するためにLPを買った。しかしCDも必要だ。なぜなら、最初期の音源を収録したヴァージョンがリリースされているからだ。これも逃せないので買った。まるで推し活のようだ……
  • ジャケットだけでなく、曲もいい。クロマティックなリフと単音連打のリフの組合せの妙、クランチの効いたリフとスラーで滑らかにつなげるリフの組合せの妙、考え抜かれた不協和音(基本の三和音に付加されている他の音が非常に吟味されているように感じる)、通常の拍子と変拍子の組合せの妙、強迫を強調するリズムと弱拍を強調するリズムの交代の妙、激しく細かく動く部分と静かに立ち止まる部分の組合せの妙などなど、もう、うっとりと陶酔してしまう展開の波状攻撃だ。時間をかけて練り上げたことが明らかな、超充実した曲が並ぶ。
  • 唯一の、だがしかしちょっと無視できない不満は、ヴォーカルが単調なこと。発声も基本的に同じだし、音程も基本的に同じだ。以前はさほどヴォーカルの質はさほど気にしていなかったのだが、ここ数年、K-POPにはまってしまい、ヴォーカルの巧拙に耳をフォーカスさせることが増えてしまったせいか、メタルを聴いていてもちょっと気になるようになってしまった。バックの質の高さに匹敵するヴォーカル専属のメンバーを入れてくれないかな、と思ってしまう今日この頃だ。とても難しいと思うけれど。

MV: Consequence


第5位 ARCH ENEMY: Blood Dynasty

  • 今はほぼ慣れたが、以前はグロウルが苦手で、ARCH ENEMYもあまり真剣には聴いてこなかった。'Anthems of Rebellion' (2003年)と 'RISE OF THE TYRANT' (2007年)だけは収録曲の多くが気にいってそれなりに聴きこみ、当時出た日本ライブDVD 'Tyrants of the Rising Sun' (2008年)を視聴して感動したりもしたが、そこで止まっていた。それからいつの間にか17年ほどが過ぎ、知らない間にメンバーもかなり変わっていることにある種の感慨をおぼえつつ、久しぶりに新作を聴いてみた。
  • いいっすね。曲調は、一貫性を保ちつつも、さまざまな試みをして多様性を増しており、飽きさせない。歌詞が昔よりも少し複雑になっているのも嬉しい。
  • ただ、ちょっとだけ注文を。第一に、ヴォーカルがたまにクリーン・トーンで歌っているのは素晴らしいことだが、登場の仕方がまだ個々の曲における単発的アイデアにとどまっていて、組織立っていないような気がする。日本の花冷え。のように、クリーン・トーンとグロウルの配分を体系的に検討すると面白いことになると思う。【と書いたのですが、その後、このヴォーカルが脱退したとの情報に接しました。今後どうなるのでしょうか。】
  • 第二に、昔から変わっていなくて残念なのが、ドラムのパターンがやや単調で、聴き手を興奮させるフックが少ないこと。特に足技を鍛えていただけないだろうか。
  • 第三に、ベースの動きも依然としてやや単調な気がする。ルート音からもっとはみ出て動き回ってほしい。
  • 第四に、ジャケット等のアートワークがおどろおどろしすぎると感じる。特に前面4人の、虐待された痕跡著しい子どもたちは、正直言って見たくない。歌詞との関連性も薄いような気がするし、何とかならないだろうか。
  • さて、これだけぶつぶつつぶやきながらも、LPとCDの両方を買って楽しんでいる。我が家の再生装置では、たいていの場合LPのほうが良い音と感じるが、本作はやや引っ込んだ音像になっているせいか、LPで聴くと若干音の分離がよくなく、こもっているように聴こえ、CDのほうが良い音と感じた。

MV: Dream Stealer


第6位 VALKYRIE ZERO: VALKYRIE ZERO

  • 大阪のガールズ?マダムズ?・バンドのEP。80年代の古典的なB級スラッシュの香りを強く漂わせるジャケットと音楽だ。もちろん私にはとても心地よい。当時、ビクターから ’SKULL THRASH ZONE’ というタイトルのジャパニーズ・スラッシュ・メタル・コンピレーション・アルバムが出ていたが、 そこに収録されていても違和感をおぼえないだろうと思ってしまうほど、古典的なスラッシュ・メタルの型を維持している(ただし、もちろん音質は現代の平均的水準に達している)。とてもいさぎよい姿勢だと思う。
  • 演奏についていうと、メインのリフの最中にあっても凶悪な音で頻繁にアドリブを入れてくるCOR氏のベース、そして、叫んではいるのだが決してうるさくないAya氏のヴォーカルが、本グループの音の独自性の中核を担っている気がする。あとは高齢であることを全く感じさせないSHUKO氏のツーバス連打! どうかお体に気を付けて、現役であり続けてください。ギターのMIHO氏は、リフはいいのだが、ソロはもう少しがんばってほしいと思う。特に、なぜかチョーキングやアーミングを全然しないので、フレーズがかなり生硬に感じられる。もしかしたら何かポリシーがあるのかもしれないので、機会があれば語っていただければと思う。

 MV: Amakusa Riot


第7位 BAND-MAID: Unseen World (LP)

  • 2021年に発売された4枚目のフル・アルバムがLP化されたので購入しました。2枚組で4-3-3-3曲という割り振りです。盤面は上記写真のとおりで、ジャケット写真に合わせたのだと思いますが真っ赤です。
  • このアルバムは、BAND-MAIDとしても、日本のHR/HMアルバムとしても、世界のHR/HMアルバムとしても、傑作だと本気で思っていて、30年後には、RAINBOWの 'Rainbow Rising' などと同じレベルでHR/HMベストアルバム100選に挙げられていてもおかしくないと信じています。コロナ下で押さえつけられた力がすべてこのアルバムに投入されているのではないかと思ってしまうほど、パワー、パワー、パワーで攻めてきます。それでいて決して単調ではなく、各曲の個性は際立っているし、アンサンブルも緊密だし、個々人の技量もものすごく上がっているし、文句のつけどころがありません。特にKANAMI氏による、他メンバーの奏でるフレーズの変化にぴったり合わせて多彩なバスドラを繰り出していく演奏は鳥肌モノ。2021年当時初めてこの盤を聴いたとき、KANAMI氏が第二のジェイソン・ビットナーへと成長していくだろうと強く確信したものであります。
  • これだけ傑作と称賛しておきながら、なぜかこれまでサブスクだけで聴いてきたのですが、今回のLPの音は、もうサブスクで聴く気にならなくなるほど、本当に素晴らしいです。ファットで、芯のある、気持ちの良い音。HR/HMのアルバムの模範とされるべき音ですね。アナログ・レコードを再生できる環境をお持ちの方には、一切の留保なくこのLPをお薦めします!

 MV: Manners, BLACK HOLE(コロナが猛威をふるっていた頃に行われた無観客ライブ)


第8位 FLOTSAM AND JETSAM: My God (LP)

  • 2001年に発売された8枚目のフル・アルバム。今年(2025年4月)にLP化されたので購入した。盤面は上記の通り茶色で、ジャケットのような砂漠を想起させる。2枚組で4-3-3曲という割り振り。D面にはボーナストラック1曲が収録されている。この曲は少々くせもので、5分ほどのあまり特色のないインスト→1分ほど波の音→2分ほど完全無音→6曲目に収録されていた 'Trash' のアンプラグド・ヴァージョンと続く、いわゆる隠しトラックである。CD初出時にはこれが煩わしかったのだが、今回はD面に単独で収めてくれているので、C面で本体の演奏がきれいに終わり、大変心地よい。
  • FLOTSAM AND JETSAMのアルバムは、好んで何度も聴くものと、ほとんど聴かないものとにきっぱり分かれるが、本作は、最も好んで聴き続けているもの。やや地味かもしれないが名作だと思う。スラッシュ・メタルのバンドではあるが、リズムは重くなく独特の軽さがあって、無類の個性を有しており、特に本作では歪まないギターのパートが多数導入され曲のヴァラエティが非常に豊かだ。メロデイ・ラインも、やや渋めだがペンタトニック中心のブルースを基調とする歌が堪能できる。
  • このような名作が埋もれてしまうのはもったいないので、再発されたことを心から喜びたい。50分強を3面に分けているので、音は非常に良い。

 MV: Keep Breathing


第9位 LOVEBITES: 明日への裁き (LP)

  • 2025年8月にLOVEBITESの旧譜のLPが発売された。値段がいささか高いため、一番のお気に入りである 'JUDGEMENT DAY' (LPにはすべて邦題が付けられている。本盤の邦題は '明日への裁き' 。)だけ購入してみた。
  • 音の傾向は他のメディアとさほど変わらないと思った。もともと中低音域主体の音作りがなされていたアルバムなので、アナログの媒体と相性がよく、大きくいじる必要がなかったのだろう。ただ、私の聴いている環境では、LPのほうがAsami氏のハイトーンがより伸びやかに抜けて聴こえた。また、本アルバムはもともと分離の良しを売りにするような音作りではない反面、音が塊として飛び出してくるパワーにあふれているという特徴を持っているが、この特徴がLPのほうで顕著になっているように思える。
  • 全体で53分くらいなので、1枚に収まるようにも思えるが、本盤は2枚組とし、全10曲を3曲ー3曲ー2曲ー2曲と分けて収録している。一気に聴き通したいときは盤をめくったり入れ替えたりしなければいけないのでいささかめんどうだが、実は本盤を通して聴きたいと思うことはあまりなく、限られた時間の中で2-3曲聴くことが多い。そんな私にはちょっとありがたい収録方法になっている。もちろん、1面の収録時間が少なくなるので音質も良い。購入してよかったと思う。
  • 本盤は名盤という評価を既に世間から与えられていると思うので、曲に関しては一言だけ。私にとってLOVEBITESは、先達の業績をよく咀嚼し継承していると評するにふさわしい良曲を抜群の演奏で提供してくれるバンドである。新鮮味はあまり感じられないが、質は非常に高い。本盤は、シーン・ハリス(Diamond Head)とスティーヴ・ハリス(Iron Maiden)とカイ・ハンセン(Helloweenなど)とトニー・マカパイン('Maximum Security'の頃)が集まってジャムったらこうなるのでないかと思われるような感じの曲に溢れている。
  • ところで、本盤のジャケットは、現代日本の刑事司法の惨状をよく示しているように思われてならない。司法の象徴である正義の女神は、諸利益を公平に検討する天秤と、正義を実現する剣を持っている。しかしこのジャケットでは剣が地面に刺さったままであり、その力が行使されていない。天秤は、LOVEBITESの化身である狼が何者かに悪用されることから必死に守ろうとしているようにみえる。まさに、警察・検察・裁判所・法制審議会等がさまざまな不正(事件のでっちあげ、証拠のねつ造、パワハラというべき取調べ、末期癌の被告人の身体拘束継続、袴田事件や福井女子中学生殺害事件等から得るべき教訓を全く引き出さずに形式理論で再審改革をつぶそうとする議論など)をやらかし、何が正義かを測る天秤がバグり、正義の剣が間違った方向に向けられ、刑事司法に対する市民の信頼がどんどん失われていく最中の刑事司法のようではないか。私はこのような現状を批判する立場にあるが、弱気になったときには本盤を聴き、ジャケットを凝視して、エンパワーさせていただこう。

 MV: Stand And Deliver


第10位 ZADKIEL: ZADKIEL (LP)

  • 1980年代初期に活動していたZADKIELの音源が2025年3月にアナログ・レコード化されたので購入。
  • 1986年に発売された4曲収録のEP (本LPのA面1-4曲) の存在は当時地方在住だった一高校生も知っていた。雑誌 BURRN! に掲載されていたレコード屋さんの広告に、髑髏っぽい顔の魔女っぽいものが箒にまたがって枯れ木の中を飛んでいるような絵のピクチャー・ディスクが毎号のように紹介されており、その禍々しさが強い印象を与えたのだ。が、お金のない地方の高校生にこれを聴く機会はなかったし、これを聴かせてくれる友人・知人もいなかった。私の中では、Doomの諸田コウ氏が在籍していたバンドという知識だけが残った。
  • 今回のアルバムに収録されている音源は、既に2006年にCD化され、サブスクにも入っているが、私は全然気づかずにいた。が、ふとしたきっかけでLPが発売をされることを知り、約40年の時を経てようやく音を聴くことができた。
  • このバンドの音楽は、モーターヘッドやヴェノムに似ていると評されているようだ。実際その通りだと思う。しかし、はっきり言うが、私にとっては、曲の質といい、演奏の質といい、先輩バンドよりもZADKIELのほうが高レベルだと思う。たいへん恐縮で忸怩たる思いだが、モーターヘッドやヴェノムのアルバムを私は聴き通すことができない。前者はシンプルすぎて、2-3曲聴けばそれで満足してしまう。後者は雰囲気はいいのだが、一部の例外を除き、曲の構成と演奏の質があまり洗練されていないように思う。これらに対し、ZADKIELは、曲も演奏も抜群だ。
  • 曲は、モーターヘッドのようにストレートな構成をとるものが多いが、まったく聴き手を飽きさせない。その最大の原因は諸田氏のベースにある。左がギター、右がベースという配置になっているが、右のベースの音量はギターと対等、場合によってはベースのほうが大きい。これは極めて異色な配置といえるが、思い切り歪ませたその音色はギターとさほど変わらないので、ツインギターのように聴こえなくもなく、違和感をおぼえない。このような配置により必然的にベースが目立つことになるが、まあそれはそれは、凄いことをやっておられる。A面第1曲 'HELL'S BOMBER' 冒頭の高速パッセージから、もうやられたという感じだ。ギターとユニゾンの場合もあるし、ルート音を弾いていることも多いが、先輩バンドと比較するとギターとベースの独立性が強く、対位法的で、聴いていて飽きないのだ。
  • ドラムも素晴らしく、4小節または8小節ごとに、ほぼ確実に異なるフィル、アドリブを入れてくる。ギターとベースだけでなく、ドラムも加えた三声対位法だ。ストレートなロックなのに、楽器間の対話がふんだんに盛り込まれており、ただひたすらスリリングで楽しい。
  • あとは・・・A面第1曲や第3曲では、ギターソロのさいに新たなリフを導入しているが、このリフが印象的でなかなかニクイ構成である。
  • というわけで、非常におすすめ。ライブ音源はあまりに音が悪いのであまり何度も聴く気がしないが、もともとEPに収録されていた4曲+2曲(まあ、これらも当時の日本のインディーズの音質だが、神楽坂EXPLOSIONでライブをさせていただいていた者からすると、あのライブハウスの音を彷彿とさせるもので、懐かしい)は、繰り返し聴き味わうにふさわしい名盤ですね!

MV: 公式のものが見当たらないのでリンクを貼るのを断念します・・・