はじめに
2025年に発売されたHeavy Metalのアルバムの中でオススメのものを紹介するブログです。1980-1990年代にキャリアをスタートさせたバンドにしかあまり興味がない人間なので、今年も、10枚も挙げることができるかどうか心配ですが、無理せずゆるゆる進んでいきましょう。1月初っ端からジョン・サイクスの訃報に接し、落ち込んでいますが、NEMOPHILAの新作やLOVEBITESのミニ・アルバムのLPが素晴らしく、癒されております。
SODOMのニュー・アルバムが良さそう
- SODOMは、1989年発売の 'Agent Orange' が大好きで、これさえあれば幸せという気分になってしまったため、それ以降は真面目に聴いてこなかった。しかしながら、ニュー・アルバムから先行公開されている2曲を耳にして、今回久しぶりにアルバムを購入してみたい気になっている。唯一不動のメンバー、トム・エンジェルリッパー氏のヴォーカルは、36年前(!)に比して衰えるどころか、非常に洗練され、喉に過度の負担をかけることなく多様な歌い方ができる優秀なものに成長している。また、'Agent Orange' 当時のギタリストであったフランク・ブラックファイア氏が再加入しているし、当時のドラマーであったクリス・ウィッチハンター氏(2008年に亡くなっている)の追悼と思われる曲 'Witchhunter' も収録されている(肝不全で亡くなったことと関連するのかもしれないが、飲酒のシーンが多く出てきて、痛ましい気持ちになる)。何だか、縁を感じるのだ。
- 曲の傾向は、さすがにかなり変わった。1989年当時は、リフ中心の作曲だったといえるが、先行公開曲は、特定の要素に偏ることなく、多彩な作り方がされているようだ。アルバムが楽しみ。
MV: Trigger Discjpline, Witchhunter
BAND-MAID: アニメ「ロックは淑女の嗜みでして」劇中演奏
- 2025年4月から放映されているアニメ「ロックは淑女の嗜みでして」第1話17:30からドラムとギターのセッションが描かれていますが、これはBAND-MAIDのお二人が弾いているのをモーション・キャプチャしたもののようです。アニメの技術も、演奏も、素晴らしいできです! 今後も、バンドシーンはすべてBAND-MAIDが担当するのでしょうか。だとしたら凄いことなので、しばらく継続して見てみましょう。
- amazon primeへのリンクはこちら。
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- 第01話 17:30 Ghost Dance
- 第03話 03:30 YOUTH
- 第05話 08:31 宝島 前半の動きは明らかにMISA。後半の動きはKANAMI。
MV: アニメのOP、Ready to Rock
候補 ARCH ENEMY: Blood Dynasty
- 今はほぼ慣れたが、以前はグロウルが苦手で、ARCH ENEMYもあまり真剣には聴いてこなかった。'Anthems of Rebellion' (2003年)と 'RISE OF THE TYRANT' (2007年)だけは収録曲の多くが気にいってそれなりに聴きこみ、当時出た日本ライブDVD 'Tyrants of the Rising Sun' (2008年)を視聴して感動したりもしたが、そこで止まっていた。それからいつの間にか17年ほどが過ぎ、知らない間にメンバーもかなり変わっていることにある種の感慨をおぼえつつ、久しぶりに新作を聴いてみた。
- いいっすね。曲調は、一貫性を保ちつつも、さまざまな試みをして多様性を増しており、飽きさせない。歌詞が昔よりも少し複雑になっているのも嬉しい。
- ただ、ちょっとだけ注文を。第一に、ヴォーカルがたまにクリーン・トーンで歌っているのは素晴らしいことだが、登場の仕方がまだ個々の曲における単発的アイデアにとどまっていて、組織立っていないような気がする。日本の花冷え。のように、クリーン・トーンとグロウルの配分を体系的に検討すると面白いことになると思う。
- 第二に、昔から変わっていなくて残念なのが、ドラムのパターンがやや単調で、聴き手を興奮させるフックが少ないこと。特に足技を鍛えていただけないだろうか。
- 第三に、ベースの動きも依然としてやや単調な気がする。ルート音からもっとはみ出て動き回ってほしい。
- 第四に、ジャケット等のアートワークがおどろおどろしすぎると感じる。特に前面4人の、虐待された痕跡著しい子どもたちは、正直言って見たくない。歌詞との関連性も薄いような気がするし、何とかならないだろうか。
- さて、これだけぶつぶつつぶやきながらも、LPとCDの両方を買って楽しんでいる。我が家の再生装置では、たいていの場合LPのほうが良い音と感じるが、本作はやや引っ込んだ音像になっているせいか、LPで聴くと若干音の分離がよくなく、こもっているように聴こえ、CDのほうが良い音と感じた。
MV: LIARS & THIEVES
候補 ZADKIEL: ZADKIEL
- 1980年代初期に活動していたZADKIELの音源が2025年3月にアナログ・レコード化されたので購入。
- 1986年に発売された4曲収録のEP (本LPのA面1-4曲) の存在は当時地方在住だった一高校生も知っていた。雑誌 BURRN! に掲載されていたレコード屋さんの広告に、髑髏っぽい顔の魔女っぽいものが箒にまたがって枯れ木の中を飛んでいるような絵のピクチャー・ディスクが毎号のように紹介されており、その禍々しさが強い印象を与えたのだ。が、お金のない地方の高校生にこれを聴く機会はなかったし、これを聴かせてくれる友人・知人もいなかった。私の中では、Doomの諸田コウ氏が在籍していたバンドという知識だけが残った。
- 今回のアルバムに収録されている音源は、既に2006年にCD化され、サブスクにも入っているが、私は全然気づかずにいた。が、ふとしたきっかけでLPが発売をされることを知り、約40年の時を経てようやく音を聴くことができた。
- このバンドの音楽は、モーターヘッドやヴェノムに似ていると評されているようだ。実際その通りだと思う。しかし、はっきり言うが、私にとっては、曲の質といい、演奏の質といい、先輩バンドよりもZADKIELのほうが高レベルだと思う。たいへん恐縮で忸怩たる思いだが、モーターヘッドやヴェノムのアルバムを私は聴き通すことができない。前者はシンプルすぎて、2-3曲聴けばそれで満足してしまう。後者は雰囲気はいいのだが、一部の例外を除き、曲の構成と演奏の質があまり洗練されていないように思う。これらに対し、ZADKIELは、曲も演奏も抜群だ。
- 曲は、モーターヘッドのようにストレートな構成をとるものが多いが、まったく聴き手を飽きさせない。その最大の原因は諸田氏のベースにある。左がギター、右がベースという配置になっているが、右のベースの音量はギターと対等、場合によってはベースのほうが大きい。これは極めて異色な配置といえるが、思い切り歪ませたその音色はギターとさほど変わらないので、ツインギターのように聴こえなくもなく、違和感をおぼえない。このような配置により必然的にベースが目立つことになるが、まあそれはそれは、凄いことをやっておられる。A面第1曲 'HELL'S BOMBER' 冒頭の高速パッセージから、もうやられたという感じだ。ギターとユニゾンの場合もあるし、ルート音を弾いていることも多いが、先輩バンドと比較するとギターとベースの独立性が強く、対位法的で、聴いていて飽きないのだ。
- ドラムも素晴らしく、4小節または8小節ごとに、ほぼ確実に異なるフィル、アドリブを入れてくる。ギターとベースだけでなく、ドラムも加えた三声対位法だ。ストレートなロックなのに、楽器間の対話がふんだんに盛り込まれており、ただひたすらスリリングで楽しい。
- あとは・・・A面第1曲や第3曲では、ギターソロのさいに新たなリフを導入しているが、このリフが印象的でなかなかニクイ構成である。
- というわけで、非常におすすめ。ライブ音源はあまりに音が悪いのであまり何度も聴く気がしないが、もともとEPに収録されていた4曲+2曲(まあ、これらも当時の日本のインディーズの音質だが、神楽坂EXPLOSIONでライブをさせていただいていた者からすると、あのライブハウスの音を彷彿とさせるもので、懐かしい)は、繰り返し聴き味わうにふさわしい名盤ですね!
MV: 公式のものが見当たらないのでリンクを貼るのを断念します・・・
候補 NEMOPHILA: Apple of my eye
- NEMOPHILAのアルバムが出るたびに、そのレベルの高さに驚嘆しつつも、1回か2回聴いて終わりというパターンが続いていた。し・か・し、今回は違いそうだ。サブスクで聴いてすぐにCDを購入し、もう7回は通して聴いている!
- まず、曲の密度がぐんと高まった気がする。サキ氏が脱退し、ギターがハヅキ氏一人になったわけだが、前作よりさらにギター・ソロの出現頻度が低くなっている。その代わり、ギターのリフ、バッキング、そしてむらたたむ氏のドラムのフックが、非常にヴァリエーション豊かになり、あちこちにフックがあって、聴いていて面白く、わくわくする。
- 次に、曲の密度が高まったことに合わせたのか、各楽器の動きが非常に聞き取りやすい音量バランスになっている。ギターの音量がぐっと抑えられたことに不満をおぼえる方もいるかもしれないが、大昔にライブハウスでいろんなバンドを聴いた経験に鑑みると、ギターが一人のバンドの音量バランスは、ライブでは今回のアルバムのようになることが多い。つまり、今回の音量バランスは非常に臨場感がある。
- さらに、前作もその傾向著しかったが、「ゆるふわ」の要素がむき出しに前面に出されることがほとんどなくなり、この要素が苦手な私には、聴いていて脱力する箇所がほとんどなくなり、とてもありがたい。
- 最後に、NEMOPHILAには和の要素を強調する曲が必ず入っており、それに違和感をおぼえることが多かったのだが、今回は、和の要素と西洋音楽の要素がうまく止揚されているように感じた。
- というわけで、非常におすすめです。
MV: Just Do It!
参考 諸田コウ: 生∞死
- Doomの初期にベースを担当していた諸田コウ氏のソロ・アルバム。1997年に発表されたものだが、2025年3月にリマスタリングされたアナログ・レコードが発売されたため、ここで紹介する。ただし、メタルではないので参考扱いで。
- 私は今回このアルバムを初めて聴いたのだが、諸田氏のソロというよりも、諸田コウ(ベース等)=三柴理(ピアノ等)=梯郁夫(パーカッション)という優秀ミュージシャンを揃えたトリオという印象を受けた。特に三柴氏(またの名を三柴江戸蔵。筋肉少女帯の初期メンバー)の存在感は強い。本当にうまい。
- さほど複雑な構成の曲はなく、基本となるリフを反復しつつ変奏を加えていくという流れが核となるものがほとんどである。ということはおそらく、プレイヤーの即興に委ねられる部分が多いと思われるため、各プレイヤーの力量がもろに問われることになるが、さすがですね。全員すばらしいです。
- メタルではないとはいえ、諸田氏のプレイがDoomのそれと大きく異なるわけではない。タッピングはあまり使われていないように思うが、フレットレス・ベースの特質を存分に活かし、グリッサンド・ポルタメントを多用したヌメヌメした流れを作っていくという基本は変わらない。その意味で、Doomの世界は現世とつながっているんだ(笑)と直観できる。聴いていて楽しいアルバムでした。
- サブスクのほうが音の分離がよく、諸田氏のベースはより聞き取れる。トレードオフの関係に立つが、LPのほう一体感が強い。分析的に聴きたいならサブスク、音楽に酔いしれたいならLPですかね。