2025年Heavy Metal私的お薦めアルバムBest 10(進行中)

はじめに

 

2025年に発売されたHeavy Metalのアルバムの中でオススメのものを紹介するブログです。1980-1990年代にキャリアをスタートさせたバンドにしかあまり興味がない人間なので、今年も、10枚も挙げることができるかどうか心配ですが、無理せずゆるゆる進んでいきましょう。1月初っ端からジョン・サイクスの訃報に接し、落ち込んでいますが、NEMOPHILAの新作やLOVEBITESのミニ・アルバムのLPが素晴らしく、癒されております。

  


花冷え。の Wacken Liveが凄い!

  • 花冷え。のWacken Liveが公開されました。良い音で録られていて、演奏も絶好調。雨がザーザー降っているが、ものともせず熱心に聴いている観客もまた素晴らしい。これは必見ですね!
  • 映像もなかなか良いが、'Today's Good Day & So Epic' ヘッツ氏が歌うシーンを撮り逃している点だけが残念。【追記:曲が後日追加されました。冒頭の '我甘党' ではばっちり映っていますね!】

 MV: 我甘党/今年こそギャル〜初夏ver./お先に失礼します。/ Today's Good Day & So Epic


候補 BAND-MAID: Unseen World (LP)

  • 2021年に発売された4枚目のフル・アルバムがLP化されたので購入しました。2枚組で4-3-3-3曲という割り振りです。盤面は上記写真のとおりで、ジャケット写真に合わせたのだと思いますが真っ赤です。
  • このアルバムは、BAND-MAIDとしても、日本のHR/HMアルバムとしても、世界のHR/HMアルバムとしても、傑作だと本気で思っていて、30年後には、RAINBOWの 'Rainbow Rising' などと同じレベルでHR/HMベストアルバム100選に挙げられていてもおかしくないと信じています。コロナ下で押さえつけられた力がすべてこのアルバムに投入されているのではないかと思ってしまうほど、パワー、パワー、パワーで攻めてきます。それでいて決して単調ではなく、各曲の個性は際立っているし、アンサンブルも緊密だし、個々人の技量もものすごく上がっているし、文句のつけどころがありません。特にKANAMI氏による、他メンバーの奏でるフレーズの変化にぴったり合わせて多彩なバスドラを繰り出していく演奏は鳥肌モノ。2021年当時初めてこの盤を聴いたとき、KANAMI氏が第二のジェイソン・ビットナーへと成長していくだろうと強く確信したものであります。
  • これだけ傑作と称賛しておきながら、なぜかこれまでサブスクだけで聴いてきたのですが、今回のLPの音は、もうサブスクで聴く気にならなくなるほど、本当に素晴らしいです。ファットで、芯のある、気持ちの良い音。HR/HMのアルバムの模範とされるべき音ですね。アナログ・レコードを再生できる環境をお持ちの方には、一切の留保なくこのLPをお薦めします!

 MV: Manners, BLACK HOLE(コロナが猛威をふるっていた頃に行われた無観客ライブ)


候補 BAND-MAID: SCOOOOOP

  • 作詞・作曲・アレンジ・演奏、すべてに気合が入っていることが感じられる力作。【書きかけ】

 MV: Present Perfect


候補 LOVEBITES: 明日への裁き (LP)

  • 2025年8月にLOVEBITESの旧譜のLPが発売された。値段がいささか高いため、一番のお気に入りである 'JUDGEMENT DAY' (LPにはすべて邦題が付けられている。本盤の邦題は '明日への裁き' 。)だけ購入してみた。
  • 音の傾向は他のメディアとさほど変わらないと思った。もともと中低音域主体の音作りがなされていたアルバムなので、アナログの媒体と相性がよく、大きくいじる必要がなかったのだろう。ただ、私の聴いている環境では、LPのほうがAsami氏のハイトーンがより伸びやかに抜けて聴こえた。また、本アルバムはもともと分離の良しを売りにするような音作りではない反面、音が塊として飛び出してくるパワーにあふれているという特徴を持っているが、この特徴がLPのほうで顕著になっているように思える。
  • 全体で53分くらいなので、1枚に収まるようにも思えるが、本盤は2枚組とし、全10曲を3曲ー3曲ー2曲ー2曲と分けて収録している。一気に聴き通したいときは盤をめくったり入れ替えたりしなければいけないのでいささかめんどうだが、実は本盤を通して聴きたいと思うことはあまりなく、限られた時間の中で2-3曲聴くことが多い。そんな私にはちょっとありがたい収録方法になっている。もちろん、1面の収録時間が少なくなるので音質も良い。購入してよかったと思う。
  • 本盤は名盤という評価を既に世間から与えられていると思うので、曲に関しては一言だけ。私にとってLOVEBITESは、先達の業績をよく咀嚼し継承していると評するにふさわしい良曲を抜群の演奏で提供してくれるバンドである。新鮮味はあまり感じられないが、質は非常に高い。本盤は、シーン・ハリス(Diamond Head)とスティーヴ・ハリス(Iron Maiden)とカイ・ハンセン(Helloweenなど)とトニー・マカパイン('Maximum Security'の頃)が集まってジャムったらこうなるのでないかと思われるような感じの曲に溢れている。
  • ところで、本盤のジャケットは、現代日本の刑事司法の惨状をよく示しているように思われてならない。司法の象徴である正義の女神は、諸利益を公平に検討する天秤と、正義を実現する剣を持っている。しかしこのジャケットでは剣が地面に刺さったままであり、その力が行使されていない。天秤は、LOVEBITESの化身である狼が何者かに悪用されることから必死に守ろうとしているようにみえる。まさに、警察・検察・裁判所・法制審議会等がさまざまな不正(事件のでっちあげ、証拠のねつ造、パワハラというべき取調べ、末期癌の被告人の身体拘束継続、袴田事件や福井女子中学生殺害事件等から得るべき教訓を全く引き出さずに形式理論で再審改革をつぶそうとする議論など)をやらかし、何が正義かを測る天秤がバグり、正義の剣が間違った方向に向けられ、刑事司法に対する市民の信頼がどんどん失われていく最中の刑事司法のようではないか。私はこのような現状を批判する立場にあるが、弱気になったときには本盤を聴き、ジャケットを凝視して、エンパワーさせていただこう。

 MV: Stand And Deliver


候補 CORONER: Dissonance Theory

  • 若いころ、友人の友人により、スラッシュ・メタルはいわゆる四強だけではないことを教えられた。その教材の1つがCORONERの1stアルバムだった。当時の私は衝撃を受け、国内盤が出ていないスラッシュ・メタルのLP・CDの渉猟を始めることになる。一度解散しているが再結成され、32年の時を経て新しいアルバムが出されることとなった。ああ、なんと素晴らしいことか!【書きかけ】

 MV: Symmetry


候補 VALKYRIE ZERO: VALKYRIE ZERO

*amazon musicにはアップされていないようです。アップされたらリンクを貼ります。

  • 大阪のガールズ・バンドのEP。80年代の古典的なB級スラッシュの香りを強く漂わせるジャケットと音楽だ。もちろん私にはとても心地よい。【書きかけ】

 MV: Amakusa Riot


候補 SODOM: The Arsonist

  • SODOMは、1989年発売の 'Agent Orange' が大好きで、これさえあれば幸せという気分になってしまったため、それ以降は真面目に聴いてこなかった。しかしながら、ニュー・アルバムから先行公開されている曲を耳にして、今回久しぶりにアルバムを購入してみた。唯一不動のメンバー、トム・エンジェルリッパー氏のヴォーカルは、36年前(!)に比して衰えるどころか、非常に洗練され、喉に過度の負担をかけることなく多様な歌い方ができる優秀なものに成長している。また、'Agent Orange' 当時のギタリストであったフランク・ブラックファイア氏が再加入しているし、当時のドラマーであったクリス・ウィッチハンター氏(2008年に亡くなっている)の追悼と思われる曲 'Witchhunter' も収録されている(肝不全で亡くなったことと関連するのかもしれないが、MVでは飲酒のシーンが多く出てきて、痛ましい気持ちになる)。何だか、縁を感じる。
  • 曲の傾向は、さすがにかなり変わった。1989年当時は、リフ中心の作曲だったといえるが、先行公開曲は、特定の要素に偏ることなく、多彩な作り方がされている。【書きかけ】

 MV: Trigger Discjpline


候補 ARCH ENEMY: Blood Dynasty

  • 今はほぼ慣れたが、以前はグロウルが苦手で、ARCH ENEMYもあまり真剣には聴いてこなかった。'Anthems of Rebellion' (2003年)と 'RISE OF THE TYRANT' (2007年)だけは収録曲の多くが気にいってそれなりに聴きこみ、当時出た日本ライブDVD 'Tyrants of the Rising Sun' (2008年)を視聴して感動したりもしたが、そこで止まっていた。それからいつの間にか17年ほどが過ぎ、知らない間にメンバーもかなり変わっていることにある種の感慨をおぼえつつ、久しぶりに新作を聴いてみた。
  • いいっすね。曲調は、一貫性を保ちつつも、さまざまな試みをして多様性を増しており、飽きさせない。歌詞が昔よりも少し複雑になっているのも嬉しい。
  • ただ、ちょっとだけ注文を。第一に、ヴォーカルがたまにクリーン・トーンで歌っているのは素晴らしいことだが、登場の仕方がまだ個々の曲における単発的アイデアにとどまっていて、組織立っていないような気がする。日本の花冷え。のように、クリーン・トーンとグロウルの配分を体系的に検討すると面白いことになると思う。
  • 第二に、昔から変わっていなくて残念なのが、ドラムのパターンがやや単調で、聴き手を興奮させるフックが少ないこと。特に足技を鍛えていただけないだろうか。
  • 第三に、ベースの動きも依然としてやや単調な気がする。ルート音からもっとはみ出て動き回ってほしい。
  • 第四に、ジャケット等のアートワークがおどろおどろしすぎると感じる。特に前面4人の、虐待された痕跡著しい子どもたちは、正直言って見たくない。歌詞との関連性も薄いような気がするし、何とかならないだろうか。
  • さて、これだけぶつぶつつぶやきながらも、LPとCDの両方を買って楽しんでいる。我が家の再生装置では、たいていの場合LPのほうが良い音と感じるが、本作はやや引っ込んだ音像になっているせいか、LPで聴くと若干音の分離がよくなく、こもっているように聴こえ、CDのほうが良い音と感じた。

MV: LIARS & THIEVES


候補 ZADKIEL: ZADKIEL (LP)

  • 1980年代初期に活動していたZADKIELの音源が2025年3月にアナログ・レコード化されたので購入。
  • 1986年に発売された4曲収録のEP (本LPのA面1-4曲) の存在は当時地方在住だった一高校生も知っていた。雑誌 BURRN! に掲載されていたレコード屋さんの広告に、髑髏っぽい顔の魔女っぽいものが箒にまたがって枯れ木の中を飛んでいるような絵のピクチャー・ディスクが毎号のように紹介されており、その禍々しさが強い印象を与えたのだ。が、お金のない地方の高校生にこれを聴く機会はなかったし、これを聴かせてくれる友人・知人もいなかった。私の中では、Doomの諸田コウ氏が在籍していたバンドという知識だけが残った。
  • 今回のアルバムに収録されている音源は、既に2006年にCD化され、サブスクにも入っているが、私は全然気づかずにいた。が、ふとしたきっかけでLPが発売をされることを知り、約40年の時を経てようやく音を聴くことができた。
  • このバンドの音楽は、モーターヘッドやヴェノムに似ていると評されているようだ。実際その通りだと思う。しかし、はっきり言うが、私にとっては、曲の質といい、演奏の質といい、先輩バンドよりもZADKIELのほうが高レベルだと思う。たいへん恐縮で忸怩たる思いだが、モーターヘッドやヴェノムのアルバムを私は聴き通すことができない。前者はシンプルすぎて、2-3曲聴けばそれで満足してしまう。後者は雰囲気はいいのだが、一部の例外を除き、曲の構成と演奏の質があまり洗練されていないように思う。これらに対し、ZADKIELは、曲も演奏も抜群だ。
  • 曲は、モーターヘッドのようにストレートな構成をとるものが多いが、まったく聴き手を飽きさせない。その最大の原因は諸田氏のベースにある。左がギター、右がベースという配置になっているが、右のベースの音量はギターと対等、場合によってはベースのほうが大きい。これは極めて異色な配置といえるが、思い切り歪ませたその音色はギターとさほど変わらないので、ツインギターのように聴こえなくもなく、違和感をおぼえない。このような配置により必然的にベースが目立つことになるが、まあそれはそれは、凄いことをやっておられる。A面第1曲 'HELL'S BOMBER' 冒頭の高速パッセージから、もうやられたという感じだ。ギターとユニゾンの場合もあるし、ルート音を弾いていることも多いが、先輩バンドと比較するとギターとベースの独立性が強く、対位法的で、聴いていて飽きないのだ。
  • ドラムも素晴らしく、4小節または8小節ごとに、ほぼ確実に異なるフィル、アドリブを入れてくる。ギターとベースだけでなく、ドラムも加えた三声対位法だ。ストレートなロックなのに、楽器間の対話がふんだんに盛り込まれており、ただひたすらスリリングで楽しい。
  • あとは・・・A面第1曲や第3曲では、ギターソロのさいに新たなリフを導入しているが、このリフが印象的でなかなかニクイ構成である。
  • というわけで、非常におすすめ。ライブ音源はあまりに音が悪いのであまり何度も聴く気がしないが、もともとEPに収録されていた4曲+2曲(まあ、これらも当時の日本のインディーズの音質だが、神楽坂EXPLOSIONでライブをさせていただいていた者からすると、あのライブハウスの音を彷彿とさせるもので、懐かしい)は、繰り返し聴き味わうにふさわしい名盤ですね!

MV: 公式のものが見当たらないのでリンクを貼るのを断念します・・・


候補 NEMOPHILA: Apple of my eye

  • NEMOPHILAのアルバムが出るたびに、そのレベルの高さに驚嘆しつつも、1回か2回聴いて終わりというパターンが続いていた。し・か・し、今回は違いそうだ。サブスクで聴いてすぐにCDを購入し、もう7回は通して聴いている! 
  • まず、曲の密度がぐんと高まった気がする。サキ氏が脱退し、ギターがハヅキ氏一人になったわけだが、前作よりさらにギター・ソロの出現頻度が低くなっている。その代わり、ギターのリフ、バッキング、そしてむらたたむ氏のドラムのフックが、非常にヴァリエーション豊かになり、あちこちにフックがあって、聴いていて面白く、わくわくする。
  • 次に、曲の密度が高まったことに合わせたのか、各楽器の動きが非常に聞き取りやすい音量バランスになっている。ギターの音量がぐっと抑えられたことに不満をおぼえる方もいるかもしれないが、大昔にライブハウスでいろんなバンドを聴いた経験に鑑みると、ギターが一人のバンドの音量バランスは、ライブでは今回のアルバムのようになることが多い。つまり、今回の音量バランスは非常に臨場感がある。
  • さらに、前作もその傾向著しかったが、「ゆるふわ」の要素がむき出しに前面に出されることがほとんどなくなり、この要素が苦手な私には、聴いていて脱力する箇所がほとんどなくなり、とてもありがたい。
  • 最後に、NEMOPHILAには和の要素を強調する曲が必ず入っており、それに違和感をおぼえることが多かったのだが、今回は、和の要素と西洋音楽の要素がうまく止揚されているように感じた。
  • というわけで、非常におすすめです。

MV: Just Do It! 


参考 諸田コウ: 生∞死

  • Doomの初期にベースを担当していた諸田コウ氏のソロ・アルバム。1997年に発表されたものだが、2025年3月にリマスタリングされたアナログ・レコードが発売されたため、ここで紹介する。ただし、メタルではないので参考扱いで。
  • 私は今回このアルバムを初めて聴いたのだが、諸田氏のソロというよりも、諸田コウ(ベース等)=三柴理(ピアノ等)=梯郁夫(パーカッション)という優秀ミュージシャンを揃えたトリオという印象を受けた。特に三柴氏(またの名を三柴江戸蔵。筋肉少女帯の初期メンバー)の存在感は強い。本当にうまい。
  • さほど複雑な構成の曲はなく、基本となるリフを反復しつつ変奏を加えていくという流れが核となるものがほとんどである。ということはおそらく、プレイヤーの即興に委ねられる部分が多いと思われるため、各プレイヤーの力量がもろに問われることになるが、さすがですね。全員すばらしいです。
  • メタルではないとはいえ、諸田氏のプレイがDoomのそれと大きく異なるわけではない。タッピングはあまり使われていないように思うが、フレットレス・ベースの特質を存分に活かし、グリッサンド・ポルタメントを多用したヌメヌメした流れを作っていくという基本は変わらない。その意味で、Doomの世界は現世とつながっているんだ(笑)と直観できる。聴いていて楽しいアルバムでした。
  • サブスクのほうが音の分離がよく、諸田氏のベースはより聞き取れる。トレードオフの関係に立つが、LPのほう一体感が強い。分析的に聴きたいならサブスク、音楽に酔いしれたいならLPですかね。