2025年K-POP私的お薦めアルバムBest 10(進行中)

はじめに

 

私的K-POPアルバムBest10の2025年ヴァージョンを始動させました。 今年もよろしくお願いいたします。

2024年版とほぼ同様に、下記の方針で作っていきます。

 

  1. 女性グループのアルバムに限ります。今の私には男性グループの曲は力強すぎて、1曲だけだとよいのですがアルバムを通して聴くと著しく疲れてしまうので。
  2. アルバムの画像をクリックすると amazon music にアップされている当該アルバムに飛びます。
  3. MVは原則としてタイトル曲1つだけを挙げます(例外もあります)。
  4. 2025年中に複数のアルバムを出しているグループについては原則として1つに絞り込みます。絞ることができないときは、同じ順位の中で併記します。
  5. 普段はクラシックとヘヴィ・メタルしか聴いていないミドル・エイジが選んでおりますので、偏っています。
  6. 2024年はおそらくすべてのヨジャ・アイドルのMVを視聴して判断したのですが、ちょっと疲れてきたので、2025年は新情報をたえず追い続けるのをやめにします。というわけで、2025年は新曲の網羅的な視聴ができないかもしれません。一番下にコメント欄を設けたので、お勧めの新曲がありましたらお教えください。参考にさせていただきます(ちなみに、ヒップホップやEDMの要素が強いもの、かわいらしいもの、ヴォーカルをオート・チューンなどで大幅に加工しているものは苦手です。ロック、ファンク、R&B、ジャズ、クラシックっぽいものは大好きです)。

Best10候補となるアルバムの紹介

WENDY:Cerulean Verge

  • 原則としてここではソロは対象にしないのですが、あまりに良いので紹介させてください。
  • 3rd EPであり、独立後の初EPでもある、重要なアルバム。CDを購入しましたが、透き通った空間の爽やかな音がとても美しく、彼女の透明かつ力強い声と相まって、聴き手を癒して力を与えてくれる名盤ですね。LPも予約したのですが、発売はかなり後になるようです。
  • 2025年10月22日に行われた日本公演に行ってきました。私の記憶が正しければ、これまでリリースしてきた3枚のEP全曲(+数曲)が披露されたと思います。「歌が上手い」と人に感じさせる要素はいろいろありますが、今のWendy氏は、その全パラメータがまんべんなく高いですね。音源ではおそらくコンプレッサーをかけられているのでダイミナック・レンジの広さが伝わりにくいのですが、ライブでは、ピアニッシモからフォルテッシモまで、繊細さとダイナミックさが両立する声の凄さを存分に味わうことができました。幸せなひと時でした。

写真:日本公演の様子(2025年10月22日@NHKホール。スマホ撮影自由の公演だったので撮影・アップさせていただきました。)

 

MV: Believe


NMIXX:Blue Valentine

  • 待望のフル・アルバム。私はLPを購入しました。LPのジャケットおよび盤面は↑のとおりです。盤面はCHUUの 'Only cry in the rain' と似ていて、空のようです。CHUUのほうは雨上がりの夕方のよう。NMIXXのほうは雲の多い青空のよう。
  • 以下、各曲の構造をみていきます。【書きかけ】
  • 【第7曲 'PODIUM'】 歌詞はスペイン語と英語と韓国語のミックスで、頑張って前に進むぞ!という感じの内容。ベースとなるリズムはレゲトン(ドンッッドウンドン)だが、あくまでもベースであり、別のリズム・パターンと組み合わせている箇所が多い。例えば、リフレインでは「ドンッッドウンドン」の後に「ンドドンドン」を組み合わせており、マーチング・バンドのような雰囲気を醸し出しつつ、「Non stop, Non stop, Non stop to the top」という歌詞とぴったり重なるよう工夫されている。曲の進行は以下のとおり。
  • 〖イントロ〗0:00  →〖第1部〗0:04 Ref a+0:13 Ref b(イントロとミックス) →0:21 Verse1 a +0:30 Verse1 b →0:38 Ref a+0:47Ref b →0:55 Chorus →〖第2部〗1:12 Ref a (半分に短縮) →1:16 Verse2 a →1:24 Verse2 b →1:33 Ref b(Ref aを省略している) →1:41 Chorus →〖第3部〗1:58 Ref a+2:06 Ref b →2:15 Bridge (コード進行はRef bのヴァリアント) →2:32 Chorus →〖コーダ〗2:48(Chorusのコード進行上に、Refやイントロの歌詞が重なる。)
  • 【第8曲 'Crush On You'】 歌詞は、恋している人のことを想って胸がいっぱい!という感じの内容。ベースとなるリズムはまたもやレゲトン(ドンッッドウンドン)だが、'PODIUM' と同じく、別のリズム・パターンと組み合わせている。この曲ではボサノバ調のシンコペーションとの組み合わせになっており、不安定な心臓の鼓動を彷彿とさせるもので、恋の歌詞にぴったりだ。曲の進行は以下のとおりで、かなりシンプル(Pre-Chorusの部分はより細かく分けることも可能だが、後に分割され登場したりはしないため、大きく括った)だが、Pre-Chorus や Bridge の部分は1回限りで再現・反復されないという意味では接続曲風であり、やはりミックス・ポップだといえると思います。
  • 0:00 Intro (Verseのコード進行を提示) →0:09 Verse →0:28 Pre-Chorus →0:55Chorus →1:13Verse →1:32 Chorus →1:50 Bridge → 2:08 Chorus

MV: Blue Valentine


KISS OF LIFE: 224

  • 2025年上半期において私が最も聴いたKPOPアルバムは、CHUUの 'Only cry in the rain' と、KISS OF LIFEの  '224' だったと思う。ネットに公開されている「再審法改正に消極的な論者の論法」という論文は、この2枚のアルバムをBGMにして生みだされた。2枚とも、聴いていて非常に幸福感が溢れてくるアルバムだ。本論文は特定の考え方をかなり強めに批判したものだが、穏やかな私がこのような強い口調の論文を書くためには心の盤石の安定が必要だった。2枚のアルバムはこの安定をもたらしてくれたので、大変に感謝している。
  • KISS OF LIFEのアルバムはすべて聴いてきたが、アルバムとしての完成度は本盤が最高だと思う。曲やアレンジが多様であるにもかかわらず、全体の統一はきっちりとれている。
  • 歌唱力もますます向上。全員が、適度に力を抜いてのびやかに歌っていることが感じられ、聴いていてとてもリラックスできる。それとは別に、彼女らが時として押し出す強い官能性が私は苦手なのだが、今回は曲全体としてはさほど強調されず、ちょっとしたフレーズにおいてさりげなく表現されることが多い。この程度なら私も大丈夫。例えば、1曲目 'Lips Hips Kiss’ において頻繁に登場するリフレイン(ミ♭・ファ・ラ♭・シ♭~ という上行フレーズ)のなまめかしさにはゾクゾクさせられる。 
  • のびやかな歌唱を最大限活かすアレンジになっているところがまた素晴らしい。特に、割とハードな曲でもバスドラやベースを強烈に押し出さず、ナチュラルなバンド演奏に近くなっているのがたまらない。クラシックなアメリカン・ソング(本盤だと5曲めの 'Slide')や、ラテン・南米系のリズムの曲(本盤だと2曲目の 'Tell me')がこのグループには多いが、これらの曲のアレンジは非常に似合っている。また、以前からこのグループはアコギをうまく使うが、今回も本当に印象的だ(2曲目の 'Tell me'、7曲目の 'Think Twice')。
  • 蛇足だが、ちょっと気になる点を2つ。第一に、サンプリングされた音の使い方に違和感をおぼえる箇所が若干ある。例えば1曲目 'Lips Hips Kiss' の冒頭に低い男声のサンプリングされた音が登場し、その後何度も繰り返されるが、ヨジャ・アイドルのアルバムを聴こうとしたらいきなり聞かされるのがこれではいささか興ざめしてしまう。また、6曲目 'Heart of Gold' において反復されるピアノの上行アルペッジョも気になる。実際はサンプリングしたフレーズをシーケンサー上でコピペしているのだろうが、ピアノの音はアナログな音の典型なので、生身の人間が弾いているように聴こえてしまう。そうすると、変化のないアルペッジョを機械的に延々と弾かねばならないピアノ・プレイヤーの苦痛が脳裏に浮かんでしまい、聴いていて圧迫感をおぼえてしまう。ピアノの音を用いるならば、変化をつけてほしかった。
  • 第二に、ところどころで挿入される英語のセリフらしきものが、So GoodとかWellとかOKとかいったように、シンプルすぎること。アメリカンな雰囲気を醸し出したいのであれば、もっとネイティヴっぽい会話等にしてほしかった。こういうところで興が削がれてしまうのは少々もったいない。

MV: Lips Hips Kiss


Kep1er: BUBBLE GUM

  • 生理的刺激と快感を提供することに全振りした、中毒性の高い曲のみで構成される思い切りのよいEP。曲、アレンジ、歌唱、すべてにおいて完成度が高く、超おススメ。体調不良のためヨンウン氏が不参加である点だけ残念。どうも、アルバムの完成度にふさわしい売り上げにはなっていないという声も聞こえてくるが、もし本当だとしたら、はなはだ残念だ。このアルバムを聴かないのはもったいない。ぜひどうぞ。
  • どの曲も好きだが、かっこよさという点では 'Don't Be Dumb' が最高。作曲の観点からは 'Ice Tea' が面白い。Bメロやブリッジなどさまざまな部分で出てくるメロディアスな部分をまとめれば、かわいい感じのオーソドックスな曲に仕上げることもできたと思うが、リズム・パターンを頻繁に変えたり、メロディアスな部分とラップの部分を頻繁に交代させたり、コーラスやアドリブと主旋律との掛け合いを多用したりするなど、いろいろと技巧を凝らし、様々な要素の複雑なアマルガムに仕上げている。異質な要素を繋ぎ合わせるのはNMIXXの十八番だが、この曲もなかなかの出来だ。
  • 'Yum' は、日本アルバム収録曲の歌詞を韓国語にしたもの。後半部分(1:53-2:07)に少し付加された部分があるが、バック・トラックだけで歌は付加されていないので、ライブではダンスにあてられている。

MV: BUBBLE GUM


ARTMS: Club Icarus

CHUU: Only cry in the rain

fromis_9: From Our 20's

UNIS: SWICY

VIVIZ: A Montage of ( )

SAY MY NAME: My Name Is…

  • デビュー曲の猫ダンスに接し、私には縁のないグループと感じていた。が、2025年2月、Eテレの韓国語講座「ハングルッ! ナビ」にゲストとして登場され、いくつかの単語を教えていただいた。いわば、私の韓国語の師匠の一人になられたのである。となれば、師匠の本業にまともに向きあわねばならない。そこで、2枚目のEPをしっかり聴いてみた。当初は、やはり私とは嗜好性が合わないと思っていたが、何回も聴いているうちに耳になじんできた。かわいらしい曲が多数を占めていることは確かだが、作曲およびアレンジはなかなか凝っており、あなどれない。
  • 1曲目の 'XOXO'。Aメロではベースが登場せず、バスドラが不規則にぽつぽつ入る。すき間が多く軽やかなアレンジだ。Bメロではベースが登場するが、あいかわらずバスドラは不規則。ブリッジにきてふいにベースは休み、バスドラは規則的な四つ打ちを開始。ブリッジ後半ではベースも再び参加。ドラムは2+3のジャージークラブに発展。サビでは4小節単位のフレーズを4回繰り返すが、前半のドラムは手数を抑え、後半では音符を増やす。曲が進んで最後のサビになると、またリズムパターンを変えてきて、本曲最多の音数となり、盛り上げる。以上のように、リズムセクションが起伏に富んでいて楽しい。定まっていない未来に向かって積極的に歩みを進めようという内容の歌詞のようだが、たどたどしいけれども確実に歩みを進めようとしている少女の心を絶えず変化するリズムが具象化していて素晴らしい。ところで、サビのヴォーカルは、4回ループするうち前半の2回は異種の短いフレーズをたたみかけるように連続させ、後半の2回はカノンにしていて、とても楽しい。2回目のサビではアドリブも入り重層性が増している。
  • 2曲目の '1,2,3,4'。かなり変容され、ハウス・ミュージックになってはいるが、オリジンはスイングであるような気がする。メインのメロディやアドリブにおいてもソウルフルな歌い方を指向しているもの(ソハ氏とドヒ氏が主として担当しているが、スンジュ氏も少し担当している)が多い。ライブなどではジャジーなアレンジを施してこの曲を歌うと映えるだろう。先に進むことの怖さを吐露する歌詞が付いている間奏部分のアカペラが素敵。カムバック活動ではこの2曲目をサブ、3曲目をメインにして活動していたようだが、グループの音楽的実力を示すのが前者、ポピュラリティを指向するのが後者と、わかりやすく役割分担されていたように思う。下に2曲目のライブも貼り付けておくが、曲にマッチしたダンスも格好いい。機械によりオクターブ下げたフレーズが登場する時にはダンスも止まり、静と動の対比が効果的に挿入されていて秀逸。
  • 3曲目の 'ShaLala'。タイトル曲。リズムが凝りに凝っていた1曲目や2曲目とは異なり、シンプルなシンコペーション・パターンが連続する。何かにときめいていることを抽象的に示す歌詞とぴったり合っている。
  • 4曲目の 'For My Dream' 。歌謡ロック調でオーソドックスに進むが、これから遭遇するであろう苦難に思いをはせる歌詞になると、大きくリズムが変わり、このグループとしてはダークで異質の世界に入り込んでいく。すぐに復帰するが、しばらくしてまたリズムが重くなる。しかしこれは自分の気持ちをあらためて確認するための停滞で、すぐに力強く再始動する。このように、歌詞に対応してヴァラエティに富んだ曲構成がなされており、面白かった。間違っていたらごめんなさいだが、おそらくこの曲のバックは生楽器。プログラムされたリズムが本来は苦手な私としては、人の演奏の揺らぎにほっとする。
  • 5曲目の 'He told me' 。ファンとの絆を歌った曲。少女時代やKARA全盛の時代にK-POPに馴染んだ方は、この曲を好きになると思う。透明感あふれる声にも好感がもてるが、さらに表現力が上がれば、よりこの曲が活かされるかも。数年後に聴いてみたい。

MV: 1,2,3,4


NMIXX: Fe3O4: FORWARD

  • アイドルのアルバムという枠を超える寸前の芸術作品。'High Horse' が先行公開された時、「ヒップ・ホップの要素が前面にでた前作とはがらりと変わり、R&B、ソウル、ポップスの要素が目立つ。こちらのほうが今のNMIXXの声質に合っていると思う」と書いた。その後アルバムがリリースされたが、アルバム全体としてはそれほどR&Bぽくなく、いつものように多様な実験的作品が集まっている。それでも、前作と比べると、何気ない旋律線やアドリブの中にR&Bぽいと感じさせるものが多く、グループメンバーの本来の嗜好をうまく活かしているように感じている。
  • とにかく作曲と編曲が素晴らしい。先端を行っていると感じさせる要素と、アイドルのアルバムに求められる平易さとをぎりぎりのラインで調整している印象。しかも、前述のように、前作よりものびのびと歌いやすいようにメロディ・ラインや音空間が工夫されている。感動的なワークだ。
  • 一番好きな曲は 'Slingshot'。クロマティック下降というダークなコード進行のもとシンコペーションが反復される、中毒性の高いパートを中心として、異なる要素を多分に含むパートを挟んでいくという、クラシックでいうところのロンド形式。ただひたすらカッコいいすね。
  • ここまで芸術性が高くなると、思い切ってアイドルのアルバムという制約を完全に取り払って曲を再構成してみてほしいという欲望がわいてくる。たとえば前述のように 'Slingshot' は中毒性が高い曲だが、2分23秒しかなく、音に浸りきる前に終わってしまう。あくまでも例だが、歌唱のはいらない中間部を設け、主部に特徴的な、半音階下降とシンコペーションの組合せを反復しつつ楽器のソロ(ノイズのコンビネーションでもよい)パートを入れたりして、6-7分まで拡大すると、中毒性が一気に上がる名曲となるだろう。RE-MIXヴァージョンとしてシングルで試してみたらいかがだろうか。

MV: KNOW ABOUT ME


aespa: Whiplash

  • aespaの5thミニ・アルバム。発表されたのは2024年だが、タワレコの記録によると、アナログ・レコードが発売されたのは2025年3月なので、ここに記します。
  • EDMやヒップホップ色の強いaespaは苦手で、ダークな中にも抒情を感じさせるDramaを例外として遠ざけていた。しかしこの5thアルバムは、抒情を感じさせるパートが多くなったのと、Charli XCXの "brat" を聞き込み、ハイパーポップっぽい音作りのものに耳が慣れてきたため、今回は通して聴くことができた。
  • さらに、アナログ・レコードを入手して聴いたら、思ったとおり、音がぐっと太くなり、心から楽しめるようになったので、ここに紹介することにしました。
  • ちなみに、上の写真には嘘が含まれていますね。下の写真が本物です(笑) 片面3曲しか収録されていないので、半分くらいまでしか溝が刻まれていません。レコードは、中心に近づくほど音が悪くなるのですが、このアルバムは大丈夫です。贅沢なつくりですね!

MV: Whiplash


RESCENE: Glow Up

  • 前作は大好きで、2024年の私的ベスト10に入った(2024年お薦めアルバムのブログを参照)。さて、本作はどうでしょうか。
  • 前作と比べると、(曲によって若干の差はあれど)キーボードの音色や音量を控えめにし、エレキ・ギターの音色も歪ませず、穏やかでシンプルなアレンジに徹している。その結果、ヴォーカルが前面に出てきて、明瞭に聴き取ることができ、本グループの歌唱の魅力を存分に味わえるようになっている。今のところ、グループ・メンバーの中にソウル・R&B寄りのパワフルなシンガーの資質を持つ方はいないようで、将来はARTMSのようになるのではないかと思われるような、繊細な声質のシンガーばかりのようだ。このようなシンガーたちを活かすためには、バックが騒がしい音を出してはいけない。というわけで、本グループの声質をよく理解している素晴らしいアレンジだ。
  • 歌唱をより聴かせることができるアレンジにふさわしく、ヴォーカルは、前作よりも中低音(バックがうるさいと埋もれてしまう音域)の登場頻度が上がったり、メロディ・ラインが複雑になったり、長めにアーティキュレーションをとるもの(つまり息継ぎをあまりしないフレーズ)が多くなったりしているように感じる。歌いこなすのが若干難しい曲が並んでいると思うが、見事にこなしていると思う。
  • 一番のお薦め曲は "In my lotion" だ。タイトル曲の "Glow Up" よりもこちらのほうが本アルバムの上記傾向を代表していると思うのでぜひお聴きください。 香りから淡い恋の記憶を蘇らせている様子を内容としていると思われる歌詞もノスタルジックでよいですね。歌詞にプルーストの名が出てくるのは、紅茶とマドレーヌを口にした瞬間に至福感が訪れ、その原因を探るとかつての記憶が蘇ってきたという出来事から始まるマルセル・プルースト『失われた時を求めて』を連想してほしいからだろう(若いころにこの小説を読破しようとしたが挫折した人間なので自信はないが、おそらく、小説の内容がダイレクトに歌詞の内容となっているわけではないと思う)。他の曲もすべて良いが、タイトル曲は、私が苦手なかわいらしい系のillitぽいところがあって、そこだけやや苦手。

MV: アルバム全曲ライブ(素晴らしい企画!)



残したい候補となるシングルの紹介

tripleS: Are You Alive 

  • 本ブログのコメント欄に初の書き込みがあり、tripleSの新曲がリクエストされました。どうもありがとうございます!
  • tripleSが2枚目のフル・アルバムを出した。フル・アルバムがほとんど出ない最近のK-POPの状況の中ではすごいことだと思う。そのタイトル曲が 'Are You Alive'。
  • クラシック音楽の用語でいうと、バッソ・オスティナート、つまり特定の低音パターンを延々と反復する手法が用いられている。ミ→ミ♭→レ→レ♭→ド→シ→ミという、最後の音以外は半音下降を繰り返す陰鬱な低音フレーズが16回繰り返されている。参考までにMVのタイムと曲の構造は以下のとおり。
  • 第1回(00:04)、第2回(00:14) サビ
  • 第3回(00:24) Aメロ
  • 第4回(00:33) ブリッジ
  • 第5回(00:43)、第6回(00:52) サビ
  • 第7回(01:02) Bメロ
  • 【イレギュラー・パート】(01:11) 機能的には2ndブリッジ
  • 第8回(01:21) ブリッジ
  • 第9回(01:30)、第10回(01:40) サビ
  • 第11回(01:53)、第12回(02:03) サビの変型
  • 【イレギュラー・パート】(02:12) 機能的には間奏。
  • 第13回(02:31)、第14回(02:41) サビ
  • 第15回(02:50)、第16回(03:00) サビ
  • 面白いのが、「イレギュラー・パート」と記したパートが2回登場する点だ。これらのパートだけは、オスティナートが用いられず、他のコード進行になっている。面白いことに、現実の厳しさを嘆く歌詞が主流ななかで、現実から逃避するような内容の歌詞がところどころに挿入されているのだが、この挿入されている部分がまさに、オスティナートを用いず他のコード進行を用いている箇所なのだ。歌詞とコード進行の対応関係、ちょっとぞくっとする。逃避しない限り、重い通奏低音のループから逃れられないのである。
  • 懸命に生きている思春期の子どもたちの息苦しさが伝わってきて、MVを見ているとつらくなってくる。しかも24人もいると、特定個人の問題ではなく、この世代全体の問題という印象が強くなる。私のような大人世代は、若い世代がこんな思いをしなくてもよいようにすべく、頑張らないとね。