J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲の構造(3)

はじめに

 

CDの解説などでは、バッハの協奏曲の構造について、「リトルネロ形式である」の一行で説明が済まされる場合が多いと思います。しかしながら、より深く曲と演奏を味わうためには、もう少し突っ込んで分析してみたいところです。このメモを参考に、バッハの協奏曲の構造美をより深く味わっていただければ幸いです。

 

 *()内の数字は小節番号を表しています。

 *【】内の数字は動画のタイムを表しています。 

 

 

第1番第3楽章

 

 

第1番第3楽章の構造は、

 

A-B-C-B’-A’

 

と分析できます。

 

第1部A (1~16)【0:00】ヘ長調

リトルネロ (1~16)。第2楽章の鬱積を一気に払う明朗さ!

 

第2部B(17~52)【0:31】ヘ長調から出発

ヴァイオリン・ピッコロのソロ。

a (17~40) 【0:31】

b(41~52)【1:17】ハ長調

 

*bは推移のセクション。第4部B’では省略されます。

 

第3部C(53~83)【1:41】イ短調から出発

中間部。全曲中、ソロ楽器群の絡みが最も濃密になされる箇所です。

本楽章全体がABCBAのシンメトリー構造になっているわけですが、実はこの中間部Cもそれ自体シンメトリーになっております。美しい構造ですね。

ア まずオーボエと絡み、(54)【1:45】

イ 次にホルンと絡み、(60)【1:56】

ウ 全合奏を挟んで、(64)【2:04】

イ またホルンと絡みます。(70)【2:16】全合奏の前のホルンの絡みと同じ動機です。

ア 最後に第1ヴァイオリンが絡みます。(74)【2:26】最初のオーボエの絡みと同じ動機です。

 

第4部B’  (84~107) 【2:57】ヘ長調

第2部Bのaを再現。ただし、転調せず、ヘ長調のままです。

 

第5部A’  (108~)【3:44】ヘ長調

第1部Aの再現。

 

 

[中川孝博 2017年3月2日記]