はじめに
私的K-POPアルバムBest10の2025年ヴァージョンです。 2024年版とほぼ同様に、下記の方針で作りました。
- 女性グループのアルバムに限ります。今の私には男性グループの曲は力強すぎて、1曲だけだとよいのですがアルバムを通して聴くと著しく疲れてしまうので。ただし、どうしても紹介したいソロ・シンガーのアルバムは別枠で取り上げました(2025年12月30日改訂)。
- アルバムの画像をクリックすると amazon music にアップされている当該アルバムに飛びます。
- MVは原則としてタイトル曲1つだけを挙げます(例外もあります)。
- 2025年中に複数のアルバムを出しているグループについては原則として1つに絞り込みます。他は「他の素敵なアルバム」の章で紹介します(2025年12月30日改訂)。
- 普段はクラシックとヘヴィ・メタルしか聴いていないミドル・エイジが選んでおりますので、偏っています。
- 2024年はおそらくすべてのヨジャ・アイドルのMVを視聴して判断したのですが、ちょっと疲れてきたので、2025年は新情報をたえず追い続けるのをやめにしました。その代わりに、読者のみなさまにお薦めの新曲を教えていただきました。コメントを寄せてくださったみなさま、ありがとうございます。
今年も何とか私的ベスト10を選出することができました。ひとえに読者の方々のおかげです。ありがとうございます。今年は悲しい出来事が多数ありました。特に、昨年の私的ベスト10にランクインしたグループのうち、PUEPLE KISSとWeeeklyが突然に活動を終了したことは大変にショックでした。また、シングルで取り上げたSPIAも姿を消しました。世の無常を感じております。しかしながら、RESCENE、SAY MY NAME、UNIS等の第5世代は順調に成長していますし、それより上の世代についても、fromis_9が復活を遂げるなど、嬉しい動向はありました。K-POPファンとなってまだ2年と少しですが、年月を重ねるほど、グループの栄枯盛衰を目の当たりにして悲しんだり喜んだりする機会が増えていくのでしょうね。
最初に一覧をお示しします。
1.最も聴いたアルバム10選
第1位 RESCENE: Glow Up
第2位 KISS OF LIFE: 224
第3位 NMIXX: Fe3O4: FORWARD
第4位 SAY MY NAME: &Our Vibe
第5位 VIVIZ: A Montage of ( )
第6位 Kep1er: BUBBLE GUM
第7位 VVUP:VVON
第8位 fromis_9: From Our 20's
第9位 ARTMS: Club Icarus
第10位-1 FIFTY FIFTY:Day & Night
第10位-2 UNIS: SWICY
2.他の素敵なアルバム4選(グループ名のアルファベット順)
izna: Not Just Pretty
NMIXX:Blue Valentine
RESCENE:lip bomb
SAY MY NAME: My Name Is…
3.どうしても取り上げたいソロ・アルバム3選(歌手名のアルファベット順)
CHUU: Only cry in the rain
Red Velvet - IRENE & SEULGI:TILT
WENDY:Cerulean Verge
4.どうしても取り上げたいシングル3選(グループ名のアルファベット順)
ILLIT:NOT CUTE ANYMORE
PURPLE KISS: Breath
tripleS: Are You Alive
1.最も聴いたアルバム10選
第1位 RESCENE: Glow Up
- 1st EPは大好きで、2024年の私的ベスト10において第4位に入りました(2024年お薦めアルバムのブログを参照)。2nd EPは一段と素晴らしく、2025年の第1位となりました!
- 前作と比べると、キーボードの音色や音量を控えめにし、エレキ・ギターの音色も歪ませず、穏やかでシンプルなアレンジに徹している。その結果、ヴォーカルが前面に出てきて、明瞭に聴き取ることができ、本グループの歌唱の魅力を存分に味わえるようになっている。今のところ、グループ・メンバーの中にソウル・R&B寄りのパワフルなシンガーの資質を持つ方はいないようで、将来はARTMSのようになるのではないかと思われるような、繊細な声質のシンガーばかりのようだ。このようなシンガーたちを活かすためには、バックが騒がしい音を出してはいけない。というわけで、本グループの声質をよく理解している素晴らしいアレンジだ。
- 歌唱をより聴かせることができるアレンジにふさわしく、ヴォーカルは、前作よりも中低音(バックがうるさいと埋もれてしまう音域)の登場頻度が上がったり、メロディ・ラインが複雑になったり、長めにアーティキュレーションをとるもの(つまり息継ぎをあまりしないフレーズ)が多くなったりしているように感じる。歌いこなすのが若干難しい曲が並んでいると思うが、見事にこなしていると思う。
- 一番のお薦め曲は "In my lotion" だ。タイトル曲の "Glow Up" よりもこちらのほうが本アルバムの上記傾向を代表していると思うのでぜひお聴きください。 香りから淡い恋の記憶を蘇らせている様子を内容としていると思われる歌詞もノスタルジックでよいですね。歌詞にプルーストの名が出てくるのは、紅茶とマドレーヌを口にした瞬間に至福感が訪れ、その原因を探るとかつての記憶が蘇ってきたという出来事から始まるマルセル・プルースト『失われた時を求めて』を連想してほしいからだろう。他の曲もすべて良いが、タイトル曲は、私が苦手なかわいらしい系のillitぽいところがあって、そこだけやや苦手。
MV: 'Glow Up' Album Live
第2位 KISS OF LIFE: 224
- 2025年上半期において私が最も聴いたKPOPアルバムは、CHUUの 'Only cry in the rain' と、KISS OF LIFEの '224' だったと思う。ネットに公開されている「再審法改正に消極的な論者の論法」という論文は、この2枚のアルバムをBGMにして生みだされた。2枚とも、聴いていて非常に幸福感が溢れてくるアルバムだ。本論文は特定の考え方をかなり強めに批判したものだが、穏やかな私がこのような強い口調の論文を書くためには心の盤石の安定が必要だった。2枚のアルバムはこの安定をもたらしてくれたので、大変に感謝している。
- KISS OF LIFEのアルバムはすべて聴いてきたが、アルバムとしての完成度は本盤が最高だと思う。曲やアレンジが多様であるにもかかわらず、全体の統一はきっちりとれている。
- 歌唱力もますます向上。全員が、適度に力を抜いてのびやかに歌っていることが感じられ、聴いていてとてもリラックスできる。それとは別に、彼女らが時として押し出す強い官能性が私は苦手なのだが、今回は曲全体としてはさほど強調されず、ちょっとしたフレーズにおいてさりげなく表現されることが多い。この程度なら私も大丈夫。例えば、1曲目 'Lips Hips Kiss’ において頻繁に登場するリフレイン(ミ♭・ファ・ラ♭・シ♭~ という上行フレーズ)のなまめかしさにはゾクゾクさせられる。
- のびやかな歌唱を最大限活かすアレンジになっているところがまた素晴らしい。特に、割とハードな曲でもバスドラやベースを強烈に押し出さず、ナチュラルなバンド演奏に近くなっているのがたまらない。クラシックなアメリカン・ソング(本盤だと5曲めの 'Slide')や、ラテン・南米系のリズムの曲(本盤だと2曲目の 'Tell me')がこのグループには多いが、これらの曲のアレンジは非常に似合っている。また、以前からこのグループはアコギをうまく使うが、今回も本当に印象的だ(2曲目の 'Tell me'、7曲目の 'Think Twice')。
- 蛇足だが、ちょっと気になる点を2つ。第一に、サンプリングされた音の使い方に違和感をおぼえる箇所が若干ある。例えば1曲目 'Lips Hips Kiss' の冒頭に低い男声のサンプリングされた音が登場し、その後何度も繰り返されるが、ヨジャ・アイドルのアルバムを聴こうとしたらいきなり聞かされるのがこれではいささか興ざめしてしまう。また、6曲目 'Heart of Gold' において反復されるピアノの上行アルペッジョも気になる。実際はサンプリングしたフレーズをシーケンサー上でコピペしているのだろうが、ピアノの音はアナログな音の典型なので、生身の人間が弾いているように聴こえてしまう。そうすると、変化のないアルペッジョを機械的に延々と弾かねばならないピアノ・プレイヤーの苦痛が脳裏に浮かんでしまい、聴いていて圧迫感をおぼえてしまう。ピアノの音を用いるならば、変化をつけてほしかった。
- 第二に、ところどころで挿入される英語のセリフらしきものが、So GoodとかWellとかOKとかいったように、シンプルすぎること。アメリカンな雰囲気を醸し出したいのであれば、もっとネイティヴっぽい会話等にしてほしかった。こういうところで興が削がれてしまうのは少々もったいない。
MV: Lips Hips Kiss
第3位 NMIXX: Fe3O4: FORWARD
- NMIXXは今年2つのアルバムを出したが、ランクインしたいのは3rd EPのほう。アイドルのアルバムという枠を超える寸前の芸術作品だと思う。多様な実験的作品が集まっているが、前作と比べると、何気ない旋律線やアドリブの中にR&Bぽいと感じさせるものが多く、グループメンバーの高い歌唱力をうまく活かしているように感じている。
- とにかく作曲と編曲が素晴らしい。先端を行っていると感じさせる要素と、アイドルのアルバムに求められる平易さとをぎりぎりのラインで調整している印象。しかも、前述のように、前作よりものびのびと歌いやすいようにメロディ・ラインや音空間が工夫されている。感動的なワークだ。
- 一番好きな曲は 'Slingshot'。クロマティック下降というダークなコード進行のもとシンコペーションが反復される、中毒性の高いパートを中心として、異なる要素を多分に含むパートを挟んでいくという、クラシックでいうところのロンド形式。ただひたすらカッコいいすね。
- ここまで芸術性が高くなると、思い切ってアイドルのアルバムという制約を完全に取り払って曲を再構成してみてほしいという欲望がわいてくる。たとえば前述のように 'Slingshot' は中毒性が高い曲だが、2分23秒しかなく、音に浸りきる前に終わってしまう。あくまでも例だが、歌唱のはいらない中間部を設け、主部に特徴的な、半音階下降とシンコペーションの組合せを反復しつつ楽器のソロ(ノイズのコンビネーションでもよい)パートを入れたりして、6-7分まで拡大すると、中毒性が一気に上がる名曲となるだろう。RE-MIXヴァージョンとしてシングルで試してみたらいかがだろうか。
MV: KNOW ABOUT ME
第4位 SAY MY NAME: &Our Vibe
- 年末にリリースされた3rd EP。とても素晴らしい。SAY MY NAME は私の中では苦手な「かわいい系」にカテゴライズされていた。アレンジが工夫されていて面白かったので2nd EPを以前紹介したが、今後も注目するかどうかは未知数だった。しかし本作では、かわいらしさを保持しつつ「かっこよさ」も加え、多層的ですこぶる質の高いアルバムとなった。文句なしのお薦め作品です!
- 第1曲目 'Bad Idea' は、本作の特徴を見事に象徴的に示している。短調と長調の間を行き来する陰影に富んだコード進行とメロディ・ラインを力強く歌い上げている。かっこいいでしょ? ただし、伴奏の音色には細心の注意が払われており、ロックそのものにはならないように音色をある程度丸くすることによりアイドルのかわいらしさが失われないようにしている。この曲がサブのカムバック曲となるようだ。
- 第2曲目 'UFO (ATTENT!ON)' がメインのカムバック曲となるようで、MVも製作されている。アメリカンなロックの一つの典型でいささか因習的だが、リズム・パターンを頻繁に変えて飽きさせないように工夫はされている。また、サビは哀愁を漂わせていてはっとさせる。
- 第3曲目 'Delulu Solulu'、第4曲目 'Hard to Love' は、彼女らの歌唱力の高さを存分に示す佳曲。特にシティ・ポップ風の後者は、伴奏の音数を最小限にし、ヴォーカルがはっきり聞こえるように工夫されている。歌唱に対する自信のあらわれと捉えられる。そしてこの試みは大成功していると思う。だまされたと思って聴いてみてください。素敵ですよ。
- 第5曲目'SAY MY NAME' は、グループ名を冠した曲。これもまた自信のあらわれだろう。最近の音数の多いメタル系を意識したフックが多用されているが、ここでも過度にハードにならないようにアレンジが工夫されている。私などは、単なるかわいいだけでなく「かっこ良い」を加えた今回のコンセプトに大賛成で、今後もこの路線を進んでほしいと思う。そのためにも、このアルバムが売れることを強く願っている。
- 蛇足だが、サブスクで聴く限り、今回のアルバムは声がすごく綺麗に録れている。CDを予約したが、その音質が楽しみだ。
MV: UFO (ATTENT!ON)
第5位 VIVIZ: A Montage of ( )
- 私が利用しているサブスクAmazon Musicによると、私が2025年に最も聴いたアーティストはVIVIZである。少々意外な気もするが、よく考えてみると、思い当たるふしがないこともない。私は少し前に循環器系の問題を生じさせてしまい、若干遠方にある病院に車で定期健診を受けに行っているのだが、その際に車内で聴く音楽がほぼ100%、VIVIZのアルバムなのだ。
- なぜ上記シチュエーションのときにVIVIZばかり聴くのか。おそらくこのグループの曲と歌唱がすこぶる官能的だからだと思う。私が好んで聴くグループの中でエロスが強調されているのはKISS OF LIFEとVIVIZの2組くらいだが、前者はマンネのハヌル氏が例外。これに対し後者は3人全員の歌唱が官能に満ち溢れている。そこで病院に行くときはVIVIZに手が伸びるということだろう。つまり、循環器系の問題を意識することは、死を意識することに直結するので、フロイト大先生によるところの生の衝動すなわちエロスに執着することになるということではないか……すみません、素人の自己分析なので思い切りはずしているかもしれません。
- VIVIZの3人は、突出して歌唱力が高い人はいないが、揃ってレベルが高く、3人のコンビネーションが絶妙である。同時に声の個性も際立っていて、ソロで歌うときの独自性の表出と、コーラスを作るときの一体感の表出のどちらも完璧という点で、理想的なヴォーカル・ユニットといってよい。アルバムの質という点では、昨年に出た5枚目のミニ・アルバム'VOYAGE' のほうがより尖っていてたと思うが、今回のフル・アルバムも極めてレベルの高い曲とアレンジであり、心から楽しめる良作だと思う。強いていえば、安定感が高すぎるのが唯一の不満点ですかね。どこか聴き手をびっくりさせるチャレンジがもう少しあれば。
MV: La La Love Me
第6位 Kep1er: BUBBLE GUM
- 生理的刺激と快感を提供することに全振りした、中毒性の高い曲のみで構成される思い切りのよいEP。曲、アレンジ、歌唱、すべてにおいて完成度が高く、超おススメ。体調不良のためヨンウン氏が不参加である点だけ残念。どうも、アルバムの完成度にふさわしい売り上げにはなっていないという声も聞こえてくるが、もし本当だとしたら、はなはだ残念だ。このアルバムを聴かないのはもったいない。ぜひどうぞ。
- どの曲も好きだが、かっこよさという点では 'Don't Be Dumb' が最高。作曲の観点からは 'Ice Tea' が面白い。Bメロやブリッジなどさまざまな部分で出てくるメロディアスな部分をまとめれば、かわいい感じのオーソドックスな曲に仕上げることもできたと思うが、リズム・パターンを頻繁に変えたり、メロディアスな部分とラップの部分を頻繁に交代させたり、コーラスやアドリブと主旋律との掛け合いを多用したりするなど、いろいろと技巧を凝らし、様々な要素の複雑なアマルガムに仕上げている。異質な要素を繋ぎ合わせるのはNMIXXの十八番だが、この曲もなかなかの出来だ。
- 'Yum' は、日本アルバム収録曲の歌詞を韓国語にしたもの。後半部分(1:53-2:07)に少し付加された部分があるが、バック・トラックだけで歌は付加されていないので、ライブではダンスにあてられている。
MV: BUBBLE GUM
第7位 VVUP:VVON
- VVUPは好きなグループで、昨年もシングル2曲を紹介した。しかし、アルバムはいつまで経っても出ないし、メンバー1人が抜けるし、新メンバーが加入するまで時間がかかるしで、かなり不安定な状況が続き、心配していた。しかし、とうとうEPを出してくれた。一安心である。
- もともとこのグループの曲は、バラードを除き、HIP HOPの要素が強く、本来は私が好むタイプではない。しかし、メンバーのリズム感が非常に良く聴いていて気持ちが良いのと、HIP HOP由来の要素が多いとはいうもののどぎつくはなく柔らかなニュアンスが基調になっているので心地よいという理由で、気がついたら何度もリピートしていることが多い。今回のEPもそうで、サブスク上のリリースからまだ5日しか経っていない時点でおそらく30回は聴いたと思う。法制審議会刑事法(再審関係)部会に意見書を提出し、その内容が非常に辛口なものになった(意見書はコチラ。記者会見の様子を伝える記事はコチラ)のだが、このような辛口のものを書いていると、自分のメンタルもやられていきそうになる。自分が好きではない対象について書くのはなかなかきついのだ。執筆途中ずっとVVUPのEPを流し続けていたが、そのおかげでメンタルがやられずに済んだ。本当にありがたい。
MV: House Party
第8位 fromis_9: From Our 20's
- fromis_9が再出発できてとても嬉しい。5人になってしまったが、無類のメイン・ヴォーカル2人(ハヨン氏とジウォン氏)が残ってくれて一安心。
- 再出発のアルバムということで、今回はあまり冒険せず、親しみやすいメロディを優先させた極めてポピュラーな曲が並んでいる。私などは、シングル・アルバム 'Supersonic' に収録されていた 'Beat the Heat' のような、ヴォーカルの技巧を遺憾なく発揮した曲も聴きたいが、次回作に期待しよう。
- 歌唱力は全員が高いが、やはりハヨン氏とジウォン氏がひときわ光を放っている。ハヨン氏が歌うだけで、どんなメロディも哀愁を帯び、ジウォン氏が入るとソウルフルなカラーで包まれる。さほど個性の強い曲が入っていないにもかかわらず何度も聴いてしまうのは、この2人の歌唱によって芸術性が二段ほど高められているから。いやはや、素晴らしい。
MV: REBELUTIONAL
第9位 ARTMS: Club Icarus
- 2024年度の私的ランキングでは、ARTMSの1stフル・アルバムが1位に輝いた。歌唱力の高さが抜群なグループで、今回の1st EPも大いに期待して臨んだ。
- 歌唱力の高さは相変わらずで、単に高音が出るとか、音程が正確だとかいった基本的な力があるというだけでなく、表現力の豊かさが本作でも際立っている。彼女らの歌を今回も堪能させていただいた。
- ただ、アルバムとしての完成度となると、引っかかる点が2点ある。第一に、ハイパー・ポップに寄せたアレンジの曲が多いが、その質が歌唱力の高さに匹敵するものになっていないような気がする。第二に、第4曲 'Goddess' が間奏曲風で、フル・アルバムの中に置かれるのであれば格別、6曲しかない(しかも第1曲はイントロにすぎない)中ではここで集中が切れてしまう。
- ハイパー・ポップ風ではない、終曲の 'BURN' のアレンジのみが、歌詞と歌唱にぴったり適合していて素晴らしいと感じた。この曲においては、新たな生への希望がセクシーな歌唱法で歌われているが、これはまさに、タナトス=死の衝動とは反対の、エロス=生の衝動の体現であり、歌唱法と歌詞の内容が高い次元で合一化されている。高度に芸術的な曲だと思う。
- タイトル曲の 'Icarus' も良い曲だが、ピアノのフレーズが生硬で、ピアノを専業にしていない人がアレンジしているのではないかと想像している。もう少しこなれたフレージングになっていると大好きな曲になっていただろう。この曲は現代舞踏風のMVがすこぶる芸術的で、その美しさに目を奪われてしまう。ぜひ視聴してみてください。
MV: Icarus
第10位-1 FIFTY FIFTY:Day & Night
- 私の中では FIFTY FIFTY は「かわいい系」にカテゴライズされていて、昨年にシングルを一定期間紹介しただけで本格的には取り上げてこなかった。今回の3rdアルバムも取り上げるべきか迷ったが、これだけ歌が上手いのに取り上げないというのもいささかおかしいので、真面目に聴いてみた。
- 聴いていて幸福感に満たされるアルバムというものがある。私の場合、松田聖子の 'Strawberry Time' がそれ(このアルバムについてはいつかどこかで書いてみたい)。FIFTY FIFTYの 'Day & Night' も、聴いていて同じように幸福感に満たされた。もちろん松田聖子のアルバムとは全く違う曲調だが、音を色で例えるならば、ピンク、オレンジが主体の暖色系で、春の柔らかな陽光の中でまどろんでいるような気持ちにさせてくれるという点で共通している。このブログのあちらこちらで書いているように、今年はハードな仕事が多かったため、このようなアルバムを聴くことは私にとってこのうえない癒しとなった。
- このような桃源郷的アルバムは、非常に繊細なアレンジと、表現力の高いヴォーカルの相乗効果により構築される。素晴らしいことに、このグループの歌唱力は非常に高い。ヴァラエティ番組での生の歌声を聴く限り、イェウォン氏が普通、アテナ氏がこれからどんどん上手くなりそう、キナ氏がかなり上手&個性豊か、ハナ氏がめちゃ上手、シャネル氏が別次元の上手さと個性、という印象。ヴォーカル・ラインも、コーラスも、アドリブも、全てが、ぴったりあるべきところに収まっていて、完璧に近いという思いを抱く。
- とはいえ、若干の注文も。K-POPのアルバムは大抵そうなのだが、このアルバムも、コーラスやアドリブの音量をかなりしぼり、背景に置いている。しかし、下にリンクを貼ったライブのように、もっと前面に出してもよいのではないか。曲調の大人度をやや上げたうえで(本作では 'Heartbreak' のような感じのものを増やして)、コーラスやアドリブを前面に持ってきて、日本でいうとLittle Glee Monsterのようなバランス(ただし曲調はソウル、R&B、ゴスペルそのものにはせずにK-POPとしてのアイデンティティを保持したうえで)にしていただけると、彼女らの歌唱力を存分に活かした名作ができるような気がする。本アルバムの曲は、親しみやすい曲が並んでいて結構ではあるのだが、彼女たちにはやや簡単なのではなかろうか。彼女らの実力を遺憾なく発揮できる曲が何曲か混じっていると、聴き手たる私はより幸福感に満たされるだろう。……我ながら自分勝手な注文だが、でも、どうでしょう? 共感してくれる音楽好きの方はいらっしゃるのでは!?
MV: Heartbreak (LIVE)
第10位-2 UNIS:SWICY
- UNISの2nd EP。デビュー・ミニ・アルバムも悪くなかったが、いかんせんメンバーの平均年齢が低すぎ、多くのメンバーの声質が少年期特有の生硬さを示していたのと、私の苦手な「かわいい系」だったので、昨年は選から外れた。本作も紹介するか迷ったが、タイトル曲の 'SWICY' が、日本のボカロのスタイルをK-POP化した感じで面白いこと(しかも完全に消化していること)、ヴォーカルの録音がとても良くて生硬さが気にならないようになっていること、そして、マンネのソウォン氏の歌唱があまりに上手すぎることから、ここに紹介することにした。まじ、一聴に値するいいアルバムですよ。
MV: SWICY
2.他の素敵なアルバム4選
izna: Not Just Pretty
- 1stミニアルバムを聴いたときはあまり心に響かなかったのだが、その後に出たシングル 'SIGN' には感動し、本ブログでも一定期間紹介した。そして2ndミニアルバムが登場した。なかなか完成度の高いアルバムだと思う。
- このグループの歌唱力は高い。ジョンウン氏が別格に上手いが、サラン氏がそれに肉薄し、ジミン氏もセビ氏もなかなかのものである。ココ氏にはラップがある。あとはマイ氏がもう一皮むければ、歌唱の点では無双のグループとなるだろう。特に、高音だけでなく、安定した太い低音・中音を出せるのが強みで、ヴァースやブリッジの部分で独自の魅力を出すことができる。 'SIGN' のヴァースはその成功例といえる。
- 本作は多彩な曲が並んでいて楽しい。1曲目 'Supercrush' は、シンコぺ―ションを多用するファンキーな曲。メンバーのジャスト・フィットなリズムに基づく歌が心地よい。2曲目 'Mamma Mia' はレゲトンのリズムに乗って全編ラップを披露。3曲目 'Racecar' は8ビートのロック調。低音・中音から高音をなめらかにつなげることができるこのグループの歌唱力が存分に活かされた曲。特にサビにおいては、行きつ戻りしつつ10度(ミからオクターブ上のソまで)の幅を上昇するが、この滑らかな移行にはほれぼれする。4曲目 'In the Rain' は16ビートのR&B。2曲目のハードなラップから、本曲のようなミドル・バラードまで、むらなく歌えるのは凄い。5曲目は 'SIGN' のリミックス。4つ打ちのダンス・ナンバーになっているが、特に違和感なく楽しめる。
- これだけ多彩な曲が並んでいるのだが、短調をメインとする曲で揃えており、アルバムとしての統一感は見事にとれている。非常におすすめ。
- 僭越ながら、一つだけ注文したいことがある。間違っていたらごめんなさいだが、メロディ・ラインに用いられているスケール(音階)が、記憶のかぎり、ペンタトニック(ラドレミソ)またはナチュラル・マイナー・スケール(ラシドレミファソラ)しかないと思う。例外は、ごくまれに一時転調している部分と、’In the Rain' において少しだけブルーノートを用いている部分のみ。長調の曲だとさほど気にならないのだが、短調の曲だと、ハーモニック・マイナー(ラシドレミファ♯ソラ)やメロディック・マイナー(ラシドレミ♯ファ♯ソラ)も適宜用いてほしいと思ってしまう。ブルーノートもさらに加えてほしい。このブログでは、fromis_9の 'REBELUTIONAL' を紹介しているが、「スケールとかいわれてもわからない」という方も、ぜひこの 'REBELUTIONAL' のメロディを口ずさんでみてほしい。半音階でつながるラインが多く含まれており、わかりやすいシンプルなメロディにさりげなく陰影を持たせていることが実感されると思う。この陰影が、iznaの曲には乏しい。
- さまざまなスケールが組み合わされてもこのグループは当然歌いこなせると確信しているので、作曲陣・アレンジ陣はぜひいろいろ挑戦してみてほしい。次作にものすごく期待しております。
MV: Racecar (LIVE)
NMIXX:Blue Valentine
- 待望のフル・アルバム。私はLPを購入した。LPのジャケットおよび盤面は↑のとおり。ジャケットは、サブスクだとタイトル曲のリミックスを集めたアルバムと同じジャケットになっている。盤面はCHUUの 'Only cry in the rain' と似ていて、空のようだ。CHUUのほうは雨上がりの夕方のよう。NMIXXのほうは雲の多い青空のよう。
- 市場では非常に好評のようで、よく売れているようだ。急にブレイクした理由は曲の平易化によるものと分析されているようである。確かに、意図的に平易化したアルバムであるとみえる部分もある。典型的なのが 'O.O' のリメイクだ。オリジナルは、曲の途中で別の曲を無理やり挿入したような強引な構成になっており、非常に新鮮だったのだが、今回は無理やり挿入したようにみえる部分を分離独立させ、ごく普通に進行する2曲に仕立て直している。特に違和感や衝撃をおぼえることなく聴けるように再構築されている。
- ただし、すべての曲が平易になっているかというと、そうでもない気がする。2曲目の 'SPINNIN' ON IT' は1st EPにのタイトル曲 'DASH' のヴァリエーションといっていよいし、 4曲目の 'Reality Hurts' はかなり尖っていて、3rd EPに収録されていたとしても違和感を抱かなかっただろう。また、これまでリリースされてきた曲の全てが難解だったわけでもない。例えば、1st EPの 'Break The Wall' や2nd EPの 'Love Is Lonely' を難解と感じる人はほとんどいないだろう。以上の両側面からみて、今回のフル・アルバムが本当に「難解だったNMIXXの曲を平易化した」と断じてよいのか、私は疑問に思っている(ただし、カムバック曲だけをみるのであれば、そう断じてよいかもしれない)。
- 個人的には、メンバーの歌唱力がさらに向上していることと、年齢が上がってきたせいか少年期特有の音色面での生硬さがかなりとれてきていて、曲の前衛性と声質のマッチングが良くなってきたことを喜びたい。1st EPについても2nd EPについても「この若い声でこれらの曲に挑戦するのはまだ早い」とブログで書いてきた私としては、純粋に嬉しい。
- 作曲面では、今までのところ3rd EPが頂点に達しているように思う。今作では上記の「平易化」問題と関連するかもしれないが、挑戦に振り切っている曲もないし、芸術性をぎりぎりのところまで高めようと意図した曲もみあたらない。挑戦している部分もあるし、アーティスティックな部分もあるが、前作よりも、ポピュラリティを失わない配慮を多くしている(例えば、前衛的なパートの後にはメロディアスなパートを持ってくるなど)。しかし面白い点はもちろん多々ある。ここではレゲトンのリズム(ドゥンーッド・ドゥンドン)の扱いについて書いてみよう。レゲトンのリズムをメインに用いている曲は3つあるが、それぞれ固有の特徴を有している。
- 1つめは、第5曲の 'RICO'。歌詞はスペイン語と英語と韓国語のミックスで、おそらく、NMIXXとファンとが一体となって盛り上がるという内容の歌詞。3曲の中では最もレゲトンのリズムが原型のまま用いられている。間奏部分等では他のラテン系リズムも登場し、祝祭の気分を盛り上げていく……ということになりそうなのだが、なぜだか暗い雰囲気で一貫している。サビでは'RICO,RICO,RICO,RICO...' つまり「気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……」と連呼されるのだが、低声で抑揚を抑えて歌われているので、あまり気持ちよさが伝わってこない。ハレの祝祭というよりも、もっと暗い情念の炎みたいなものを感じさせる。というわけで、なかなか一癖あるミステリアスな曲になっている。
- 2つめは、第7曲の 'PODIUM'。こちらもスペイン語と英語と韓国語がミックスされた歌詞で、頑張って前に進むぞ!という感じの内容。ベースとなるリズムはレゲトンだが、第5曲とは異なり、別のリズム・パターンと組み合わせている箇所が多い。例えば、リフレインでは「ドゥンーッド・ドゥンドン」の後に「ンドゥ・ドンドン」を組み合わせており、マーチング・バンドのような雰囲気を醸し出しつつ、'Non stop, Non stop...' と前進することを述べる歌詞が載せられている。
- 3つめは、第8曲の 'Crush On You'。恋している人のことを想って胸がいっぱい!という感じの内容の歌詞。ベースとなるリズムはレゲトンだが、'PODIUM' と同じく、別のリズム・パターンと組み合わせている。この曲ではボサノバ調のシンコペーションとの組み合わせになっており、不安定な心臓の鼓動を彷彿とさせるもので、恋の歌詞にぴったりだ。
- 以上のように、レゲトンというリズムの「主題とその変奏2種」を、連続でなく、分散させて配置させているところは、メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」やブーレーズの「主のない槌」の楽章構成を想起させて面白い。曲数が多いフル・アルバムだからできる試みで、存分に楽しませていただきました。
MV: Reality Hurts
RESCENE:lip bomb
- 3枚目のミニ・アルバム。前作の2枚目(私的ランキング第1位!)について「メロディ・ラインが複雑になったり、長めにアーティキュレーションをとるもの(つまり息継ぎをあまりしないフレーズ)が多くなったりしている」と感想を書いたが、今回は、対照的に、かなり短いフレーズを積み重ねるものが多い。
- 歌唱法がより多彩になり、もともとの持ち味であった繊細な歌い方だけでなく、力をこめたソウルフルな歌い方もかなり導入し始めている。タイトルの 'lip bomb' がよりセクシーに、よりアダルトになろうとしていることを示唆しているとすると、それは歌唱法の多様さに顕著に現れていると思う。
- フレーズを短くしたのは、おそらくソウルフルな歌唱を多く用いていることと関係があるのではないかと想像している(強い声のブレス・コントロールがより上手くなるのを待っているということ)。もしそうだとしたら、グループのアイデンティティを保持しつつ、アーティストの成長に合わせて(あるいはアーティストの成長を無理なく促すべく)曲調を変えていく作曲・アレンジ・プロデューサー陣の慧眼を称えたい。ただし、息の長いメロディは紡がれないため、フレーズ単位ではソウルフルなのに抒情味あふれる曲調にはならず、どことなく乾いた印象を与える。これを良い特徴と捉える方もいらっしゃるだろうが、私は声がよりしっかりするまでの過渡期ならではのものと捉えてみたい。
- 唯一の例外が終曲の 'MVP'。恋がかなった嬉しさを伝えているようにも、ファンとのつながりを大切に思っていることを伝えているようにも感じられる歌詞をのせて、シンプルだが、力強く、抒情的で、息の長いメロディが紡ぎ出されており、素晴らしい。Red Velvetがこの曲を歌ったらさぞかし映えるだろうと思わせる曲で、RESCENEのみなさんがそのレベルに達する日が遠からずやってくることを強く期待させる。
MV: MVP (3人による live ver.)
SAY MY NAME: My Name Is…
- 2nd EP。昨年、デビュー曲の猫ダンスに接し、私には縁のないグループと感じていた。が、2025年2月、Eテレの韓国語講座「ハングルッ! ナビ」にゲストとして登場され、いくつかの単語を教えていただいた。いわば、私の韓国語の師匠の一人になられたのである。となれば、師匠の本業にまともに向きあわねばならない。そこで、2枚目のEPをしっかり聴いてみた。当初は、やはり私とは嗜好性が合わないと思っていたが、何回も聴いているうちに耳になじんできた。かわいらしい曲が多数を占めていることは確かだが、作曲およびアレンジはなかなか凝っており、あなどれない。
- 1曲目の 'XOXO'。Aメロではベースが登場せず、バスドラが不規則にぽつぽつ入る。すき間が多く軽やかなアレンジだ。Bメロではベースが登場するが、あいかわらずバスドラは不規則。ブリッジにきてふいにベースは休み、バスドラは規則的な四つ打ちを開始。ブリッジ後半ではベースも再び参加。ドラムは2+3のジャージークラブに発展。サビでは4小節単位のフレーズを4回繰り返すが、前半のドラムは手数を抑え、後半では音符を増やす。曲が進んで最後のサビになると、またリズムパターンを変えてきて、本曲最多の音数となり、盛り上げる。以上のように、リズムセクションが起伏に富んでいて楽しい。定まっていない未来に向かって積極的に歩みを進めようという内容の歌詞のようだが、たどたどしいけれども確実に歩みを進めようとしている少女の心を絶えず変化するリズムが具象化していて素晴らしい。ところで、サビのヴォーカルは、4回ループするうち前半の2回は異種の短いフレーズをたたみかけるように連続させ、後半の2回はカノンにしていて、とても楽しい。2回目のサビではアドリブも入り重層性が増している。
- 2曲目の '1,2,3,4'。かなり変容され、ハウス・ミュージックになってはいるが、オリジンはスイングであるような気がする。メインのメロディやアドリブにおいてもソウルフルな歌い方を指向しているもの(ソハ氏とドヒ氏が主として担当しているが、スンジュ氏も少し担当している)が多い。ライブなどではジャジーなアレンジを施してこの曲を歌うと映えるだろう。先に進むことの怖さを吐露する歌詞が付いている間奏部分のアカペラが素敵。カムバック活動ではこの2曲目をサブ、3曲目をメインにして活動していたようだが、グループの音楽的実力を示すのが前者、ポピュラリティを指向するのが後者と、わかりやすく役割分担されていたように思う。下に2曲目のライブも貼り付けておくが、曲にマッチしたダンスも格好いい。機械によりオクターブ下げたフレーズが登場する時にはダンスも止まり、静と動の対比が効果的に挿入されていて秀逸。
- 3曲目の 'ShaLala'。タイトル曲。リズムが凝りに凝っていた1曲目や2曲目とは異なり、シンプルなシンコペーション・パターンが連続する。何かにときめいていることを抽象的に示す歌詞とぴったり合っている。
- 4曲目の 'For My Dream' 。歌謡ロック調でオーソドックスに進むが、これから遭遇するであろう苦難に思いをはせる歌詞になると、大きくリズムが変わり、このグループとしてはダークで異質の世界に入り込んでいく。すぐに復帰するが、しばらくしてまたリズムが重くなる。しかしこれは自分の気持ちをあらためて確認するための停滞で、すぐに力強く再始動する。このように、歌詞に対応してヴァラエティに富んだ曲構成がなされており、面白かった。間違っていたらごめんなさいだが、おそらくこの曲のバックは生楽器。プログラムされたリズムが本来は苦手な私としては、人の演奏の揺らぎにほっとする。
- 5曲目の 'He told me' 。ファンとの絆を歌った曲。少女時代やKARA全盛の時代にK-POPに馴染んだ方は、この曲を好きになると思う。透明感あふれる声にも好感がもてるが、さらに表現力が上がれば、よりこの曲が活かされるかも。数年後に聴いてみたい。
MV: 1,2,3,4
3.どうしても取り上げたい
ソロ・アルバム3選
CHUU: Only cry in the rain
- CHUU氏は、人の凍てついた心を溶かし、癒してくれる、際立ってやさしい美声の持ち主だと思う。本アルバムは、曲も、アレンジも、彼女のやさしい声質の魅力を存分に引き立てた傑作で、私もこのアルバムを何度となく聴いて癒された。このアルバム製作に携わった全ての方々に感謝したい。
- このアルバムの、他者に対する共感性に満ちた、優しく暖かい特徴を際立たせようとしたのだろうか。LPもCDも非常に凝った作りになっている。上記写真のように、LPは雨が降った後に雲の合間から夕陽が差し込み始めたかのようなデザインになっており、タイトル曲にぴったりだ。この盤が回っているのを眺めながら聴くのは至極の悦び。また、8cmのCDのほうは、上記写真のように、黒い円状の固いスポンジに装着されており、まるで7インチのドーナツ盤のようにみえる作りになっている。一般的にはアナログ・ディスクのほうが暖かい音がすると言われているので、その印象を借りてきたということだろうか。どちらも愛おしく、2種類とも購入してしまった。
MV: Only cry in the rain
Red Velvet - IRENE & SEULGI:TILT
- IRENE & SEULGIのセカンド・ミニアルバム 'TILT' (とナムジャ・アイドルの The Wind)をお勧めしてくださるコメントをいただきました。ありがとうございます! 励みになります。Red Velvetを愛する私は、もちろん、このアルバムがずっと気になっておりました。取り上げましょう。
- Red Velvetのメンバーのソロ作品の中では、歌唱Wendy氏のものを一番良く聴いている。歌唱力が抜群だからだ。ただ、彼女の歌は概して健康的で、暖かくて、良い意味で優等生的なので、たまには正反対のものも聴いてみたい、と思うことがある。そんな時に手が伸びるのが、IRENE & SEULGIの本作だ。とても官能的で、クールで、ダーク。緻密な音作りがなされた芸術作品だと思う。
- 1曲目 'TILT'。心臓の鼓動のような四つ打ちドラムの上に、ほのかな熱情をたたえた低声のAメロ。素晴らしい始まりだ。ブリッジでは高音がメインとなり感情が一気に高まるが、サビでは 低声の 'TILT' のリフレインと中高音で途切れ途切れに歌われるメインメロディとの対位法となる。これほどドラマティックな進行になっているのに、たたずまいはクール。この見事にアダルトな音作りには感嘆せざるを得ない。
- 2曲目から4曲目までは、シンコペーションを多用したファンキーな曲が並ぶ。2曲目 'What's Your Problem?' 自分に依存しようとする男性を拒絶するという内容の歌詞がなかなか強烈。2回目のAメロから、KISS OF LIFEのジュリー氏によるラップが入る。KISS OF LIFEのファンとしては嬉しいサプライズ。
- 3曲目 'Irresistible' 2曲目と同じくファンキーなリズムだが、こちらのほうが若干テンポが遅く、シンコペのリズムもより跳ねている。歌詞は2曲目とは対照的に、男性を虜にしようとしている内容の歌詞。曲そのものは素晴らしいのだが、ギターの音が細く、リズムも機械的で、少々気になる。もしかしたら、ギターの音色だがキーボードで弾いているかもしれない。
- 4曲目 'Girl Next Door' 3曲目もまたまたファンク。跳ね具合はさらに強くなり、ベースもかなり前に出てきて太い音像になっている。歌詞は隣人の女性を鼓舞する内容のもの。Cメロで突如8ビート由来の異質なリズムに変わるのが面白い。
- 5曲目 'Trampoline'。トランポリンの上で垂直に上下しているかのようなピアノのオクターブから始まる。歌詞はおそらく、彼氏の胸に飛び込んでいきたい思いを比喩的に表現しているもの。サビのメロディは独特だが、下降する音型のリフレインは、飛び降りる動作の比喩になっているのかもしれない。アドリブでは、非常に高い声をファルセットにすることなく出しているように思われるが、そうだとしたら凄いの一言。どちらが歌っているのだろうか。スルギ氏かな?
- 6曲目 'Heaven'。またまたファンクだが、非常にムーディー。夜の音楽。歌詞も、相手を誘惑している感じの曲。
- 全体としてファンク調の曲が多く、やや多様性に欠けるが、アメリカンなファンクそのものというわけではなく、K-POPらしく異質なもののミックスが随所で試みられており、さほど単調な印象は与えない。また、ファンクな曲が多いだけに、そうでない 'TILT' や 'Trampoline' が際立ち、強く印象付けられる。
MV: TILT
WENDY:Cerulean Verge
- 原則としてここではソロは対象にしないのですが、あまりに良いので紹介させてください。
- 3rd EPであり、独立後の初EPでもある、重要なアルバム。CDを購入しましたが、透き通った空間の爽やかな音がとても美しく、彼女の透明かつ力強い声と相まって、聴き手を癒して力を与えてくれる名盤ですね。LPも予約したのですが、発売はかなり後になるようです。
- 2025年10月22日に行われた日本公演に行ってきました。私の記憶が正しければ、これまでリリースしてきた3枚のEP全曲(+数曲)が披露されたと思います。「歌が上手い」と人に感じさせる要素はいろいろありますが、今のWendy氏は、その全パラメータがまんべんなく高いですね。音源ではおそらくコンプレッサーをかけられているのでダイミナック・レンジの広さが伝わりにくいのですが、ライブでは、ピアニッシモからフォルテッシモまで、繊細さとダイナミックさが両立する声の凄さを存分に味わうことができました。幸せなひと時でした。
写真:日本公演の様子(2025年10月22日@NHKホール。スマホ撮影自由の公演だったので撮影・アップさせていただきました。)
MV: Believe
4.どうしても取り上げたい
シングル3選
4.どうしても取り上げたい
シングル3選
ILLIT:NOT CUTE ANYMORE
- ILLITの 'NOT CUTE ANYMORE' のリクエストをいただきました。ありがとうございます! リクエスト・コメントには「タイトル名のとおり、今回の曲はかわいい系のコンセプトではありません。落ち着いていてゆったりとした曲になっていると思います」と書かれており、かわいい系が苦手である私の傾向を把握されていらっしゃって嬉しいです。そこで、真剣に聴いてみました。感想は以下の通り。
- ILLITが変化を試みていると感じたのは、THE FIRST TAKEに登場して、ブラスの入ったアレンジによる 'Magnetic' を披露したときだ。感銘を受けたので本ブログでも一定期間紹介した。ただし、ファンには怒られるかもしれないが、このアダルトなアレンジに負けない歌を示せたのはユナ氏だけ、と私は感じていて、この試みはまだ早いのではと思っていた。
- 今回の 'NOT CUTE ANYMORE' は非常に面白い試みだと思う。曲調は明らかに80年代のシティ・ポップで、アダルト志向のように聴こえるが、MVの演出は、背伸びしたい年頃の少女であることが強調されている。アルバムに収録されているもう1曲(昔の言い方だとB面)’NOT ME’ という曲も、ややハードラップ調で始まり、アダルト志向のように思わせるが、歌詞の内容は、自分を他人から規定されたくないという趣旨の、いかにも思春期の思いを表現している。こうしてみてくると、このシングルは、本当にアダルト路線を志向しているのではなくて、背伸びしながら懸命に生きている少女を表現していると捉えられそうだ。
- このようなコンセプトだと、まだ歌唱が発展途上でも違和感を抱かせない。むしろ、発展途上の今しか適切に表現できない曲と演奏になっている。お見事。
MV: NOT CUTE ANYMORE
PURPLE KISS: Breath
- PURPLE KISSは私のイチオシのグループで、私的ランキングには常にランクインしてきた。しかし、突然の解散宣言。あまりに悲しくて言葉が出ず、シングル 'I Miss My...' がリリースされても取り上げることができなかったくらいである。ここでは、ラスト・シングルである 'Breath' を挙げておきたい。みなさん、聴いてみてください。ほら、素晴らしいシンガーたちでしょ? なぜ解散しなければならないのでしょうか。
tripleS: Are You Alive
- 本ブログのコメント欄に初の書き込みがあり、tripleSの新曲がリクエストされました。どうもありがとうございます!
- tripleSが2枚目のフル・アルバムを出した。フル・アルバムがほとんど出ない最近のK-POPの状況の中ではすごいことだと思う。そのタイトル曲が 'Are You Alive'。
- クラシック音楽の用語でいうと、バッソ・オスティナート、つまり特定の低音パターンを延々と反復する手法が用いられている。ミ→ミ♭→レ→レ♭→ド→シ→ミという、最後の音以外は半音下降を繰り返す陰鬱な低音フレーズが16回繰り返されている。参考までにMVのタイムと曲の構造は以下のとおり。
- 第1回(00:04)、第2回(00:14) サビ
- 第3回(00:24) Aメロ
- 第4回(00:33) ブリッジ
- 第5回(00:43)、第6回(00:52) サビ
- 第7回(01:02) Bメロ
- 【イレギュラー・パート】(01:11) 機能的には2ndブリッジ
- 第8回(01:21) ブリッジ
- 第9回(01:30)、第10回(01:40) サビ
- 第11回(01:53)、第12回(02:03) サビの変型
- 【イレギュラー・パート】(02:12) 機能的には間奏。
- 第13回(02:31)、第14回(02:41) サビ
- 第15回(02:50)、第16回(03:00) サビ
- 面白いのが、「イレギュラー・パート」と記したパートが2回登場する点だ。これらのパートだけは、オスティナートが用いられず、他のコード進行になっている。面白いことに、現実の厳しさを嘆く歌詞が主流ななかで、現実から逃避するような内容の歌詞がところどころに挿入されているのだが、この挿入されている部分がまさに、オスティナートを用いず他のコード進行を用いている箇所なのだ。歌詞とコード進行の対応関係、ちょっとぞくっとする。逃避しない限り、重い通奏低音のループから逃れられないのである。
- 懸命に生きている思春期の子どもたちの息苦しさが伝わってきて、MVを見ているとつらくなってくる。しかも24人もいると、特定個人の問題ではなく、この世代全体の問題という印象が強くなる。私のような大人世代は、若い世代がこんな思いをしなくてもよいようにすべく、頑張らないとね。






















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下沼恵美子 (日曜日, 09 11月 2025 12:24)
毎回ブログ読むのが楽しくて楽しくて!いつも最新の投稿がないかなあと心待ちにしていました!更新ありがとうございます( ᵒ̴̶̷̥́ࡇᵒ̴̶̷̣̥̀ )ღ 男性アイドルがアルバムとして聴き疲れるの少しわかりますㅎㅎ。唯一聴いているのは더윈드 (the wind)です
2025年だとtilt irene&seulgi 2nd mini の収録曲 trampolineやheavenは面白い音が鳴ってると個人的に感じました 機会がありましたらぜひ おすすめします⸜ ♡ ⸝ 寒くなるので暖かくしてお過ごしください また更新待ってます ☻
田中守也 (金曜日, 12 12月 2025 18:00)
ブログの更新お疲れ様です。私は音楽に造詣が深いわけではありませんが、ジャンルを問わず聴いて楽しんでいます。
最近リリースされたILLITの「NOT CUTE ANYMORE」はどうでしょうか。タイトル名のとおり、今回の曲はかわいい系のコンセプトではありません。落ち着いていてゆったりとした曲になっていると思います。
またの更新を楽しみにしています。