刑事法入門 第04回授業

08 法的意見表明の技術 (3)

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これだけは!
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学修ガイド

  • 【動画08を授業でお使いになる教員の方 & 混乱しない自信のある受講生へ】動画08における法的三段論法の説明は、通常の説明とは異なっている。通常は、①大前提に「~~という法律要件を満たした場合には、~~という法律効果が生ずる」といった形で、法律要件と法律効果をセットにした法規範を挙げ、②小前提に「~~という事実は法律要件を満たしている」といった形で、事実のみならず包摂(あてはめ)まで含め、③第三段階を「結論」と称したうえで「特定事実に法律効果が生ずる」という文を置く。しかし、動画08ではこの定型パターンに沿わない説明をした。つまり、①大前提には「停止させて」などのように法律効果や法律要件の一部だけを挙げることもあり、②小前提には事実しか置かず、③包摂(あてはめ)は独立して第三段階とした。その結果、④結論は、法的三段論法の枠から外れ、いわば第四段階に置いている。これは、理論的に新説を提示しようとしているものではなく、教育上の便宜を考えてのことである。すなわち、事例問題を解く際に何をどのような順序で書いていくかを指導する際に、このような説明の仕方のほうが便利だと考えているからである。事例問題を解く際には、法律要件(の一部)や法律効果(の一部)をどのように解釈するか、そして、解釈により確定した法規範に事実をどのようにあてはめるかがメインテーマとなることが圧倒的に多い。それにもかかわらず、一般的な法的三段論法の説明では、小前提において事実の適示と法律要件への包摂が行われており、機能過多の状態となっている。これでは包摂の過程が可視化されないので、学生もあてはめのプロセスを意識できず、答案に書けないという状況に陥りがちである。そこで、包摂の過程を可視化させようとすると、「小前提」と「あてはめ」を分離させたほうがよい。また、「あてはめ」が争いになるのは法律要件の一部にすぎない場合が多いから、「大前提」には全法律要件のうち争いになっている部分だけ置いて、焦点を拡散させないようにしたい。このように考えた結果、動画08のような説明になったのである。……というわけなのですが、通常の法的三段論法の説明を無視するわけにもいきませんので、とりあえずは動画08の説明に基づいて授業を進めていただき、学生が法的意見表明の型に慣れた頃に、法的三段論法の話に戻り、通常は法的三段論法をどのように説明しているかをご教授いただければ幸いです。このようにすれば、学生は法的三段論法に沿って事例問題をスムーズに書けるようなり、混乱を避けることができるでしょう。
  • 上記弁解をご理解いただいたうえで、「典型的な」「通常の」法的三段論法をわかりやすく解説しているものを読んでみようと思われる方は、金井高志『民法でみる法律学習法』(日本評論社、2011年)の第4章(85頁以下)などどうぞ。

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